
菅義偉氏が第99代の内閣総理大臣に就任した。各メディアは新首相および新内閣の話題で持ち切りだ。
私個人としては、
「ああそうですか」
と申し上げる以外に伝えるべき言葉が見つからない。
もう少し事態がはっきりしてきたら、あるいは、何かを言うことになるかもしれないが、何も言わないかもしれない。私が何かを言う前に、政権の方が倒れているかもしれない。どっちにしても、先のことはわからない。
今回は、大坂なおみ選手の全米オープンテニス大会での優勝をめぐって、いくつかのメディアで取り上げられた話題を振り返ってみたいと思っている。
この話題には、いくつかの重要な問題の糸口が顔をのぞかせている。その「いくつかの重要な問題」を思いつくままに箇条書きにすれば、
- アメリカにおける黒人差別の問題に、われら日本人は、どのようなスタンスで関与すべきであるのか。
- スポーツ選手や芸能人などの著名人が社会的な問題や政治的な事象について発言することを、わたくしども一般人はどう受け止めたら良いのか。
- 女性のスポーツ選手を「真央ちゃん」「なおみちゃん」と、いつまでたっても「娘呼び」にしたがる国民の心情の奥底には何が隠されているのか。
- 女性差別や人種差別など、なんであれ差別について発言する人間を「反差別界隈」などと呼んで揶揄したがる人たちの真意は那辺にあるのだろうか。
という感じになる。
最初の黒人差別問題についての議論は、一見、わりと単純に見える。
というのも、原則論を述べるなら、どこの国の誰に対する差別であれ、人間が人間を差別することは、許されないことであるはずだからだ。
してみると、不当な差別に抗議の声を上げている人々を支援するのが21世紀の人間として当然の反応だということになる。
ただ、世界は原理原則だけで動いているわけではない。
たとえばの話、中国政府によるウイグル人やチベット民族への差別待遇に抗議の声を上げている人たちは、アメリカの黒人差別に比較的冷淡だったりする。逆にアメリカの黒人差別問題を取り上げることに熱心な論客は、ウイグル、チベットの問題にはさしたる関心を示していないケースが多い。
これらの問題への評価は、差別が良いとか悪いとかいった原則の話よりも、差別に関与している人々と、それを話題にしている人々の関係の近さをより大きく反映している。
であるから、中国政府に難癖をつけたいと考えている人々は、なにかにつけてウイグル・チベットの話題を持ち出したがるし、逆にアメリカの現政権に言いがかりをつけたいと考えている向きは、彼の国の国論を二分している黒人差別問題を話題にしたがる。そういうことになっている。
大坂なおみ選手が全米オープンテニスのコート上に持ち込んだBLM(Black Lives Matter)についても、人々の反応は一様ではなかった。
わかりやすい例をひとつご紹介する。
大坂なおみ選手が優勝を決めた9月14日、自民党所属の参議院議員・松川るい氏がこんなツイートを投稿した。(←現在は削除済み)
《大坂なおみさん、優勝おめでとうございます!! 優勝だけでも凄いのに、7枚のマスクに込めたメッセージは凄いインパクトを米国に世界に与えました。日本人として誇りに思います。米国警察は黒人の命を軽視するのをやめてほしい。》
すると、このツイートに対して、主に自民党の支持層から反発が殺到する。
代表的なご意見としては
「大坂なおみは無謬ではない」
「アメリカの警察が黒人の命を軽視していると断じるのは軽率」
「国会議員が公の場で発信することではない」
「民主党に利用されている」
「暴力的な暴動に発展している運動を無批判に支援するのか」
といったあたりだったろうか。
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