もっとも、うんざりしたりショックを受けたりして、途中で読むのをやめた人も少なくないはずだ。
 どうか、びっくりして自分たちの国に絶望しないでほしい。
 寄せられているクソリプは、この国の、ひとつの現実ではある。
 とはいえ、それだけが日本のすべてではない。
 私たちの国は、クソリプを投げる人々を大量に含む中で運営されている。

 でも、それを読んでうんざりしているあなたのような人がいる限り、希望を捨てるべきではない。そう思って、なんとかやり過ごそうではありませんか。

 思うに、「日本人感」という言葉が醸している
 「日本国籍を持っていない人間が、あたかも日本人であるかのように振る舞うことはやめてほしい」
 という要求のあり方自体が、明らかに差別的であることに、この言葉を持ち出した本人が気づいていないところが、どうにも痛々しい。

 仮に「日本人感」といったようなものがあるのだとして、それは日本国籍保有者の特権ではないはずだ。民族的に純血な日本民族(←これだって、何代かさかのぼれば誰も確かなことは言えなくなる)にだけ許されている民族的に固有な表現形式でもない。日本の社会の中で育ち、日本語を駆使する日常を送っている人間であれば、誰であれ醸し出している、「雰囲気」に過ぎない。

 ついでに申せば「日本人感」なるものは、特定の個人が意識的に「出す」ものではない。むしろ、特定の誰かを見てほかの誰かが「感じ取る」要素であるはずで、だとすれば、そんな曖昧模糊としたものを材料に他人を非難したり断罪したりすることは、差別そのものではないか。

 水原希子さんは、引用したツイートでもわかる通り、自分の考えをはっきりと表明する人物で、その点でわが国の平均的な芸能人とは一線を画している。
 そして、彼女のような「はっきりとものを言う女性」は、その発言内容の如何にかかわらず、必ずやあるタイプの人々から攻撃されることになっている。

 それほど、うちの国の社会は風通しがよろしくない。

 上でご紹介したツイートをきっかけに、彼女の発言が、続々と発掘されて、次々に炎上している。
 《水原希子さん、最高では…?》

 これは、水原希子さんのファンとおぼしきアカウントが、「最も美しい顔ランキング2020」というサイトが、知らないうちに自分をノミネートしていたことを知った水原希子さんが、そのサイトの取り扱いと、他人の容貌を勝手にランク付けして評価する「ルッキズム」全般に対して苦言を呈する旨の発言をしたことを賞賛するツイートなのだが、これに対して

 《ルックスでお金を稼ぐ仕事の人がこれいうのは流石におかしいのではないか》

 という言い方で、元のツイートを引用した投稿がまたRTを稼ぐことになる。

 と、かねて「ルッキズム批判」への批判やフェミニズム言説の揚げ足をとることに熱心だった論客が、この炎上に乗っかる形で自説を開陳しはじめたりして、事態はさらに混沌としている。
 なんとバカな展開ではあるまいか。

 かように、わが国では、黒人vs白人、有色人種orWASPといった、わかりやすい対立軸が見えにくい半面、在日外国人、混血、二重国籍、被差別部落、先住民、女性、犯罪被害者といった一見しただけでは判別しにくい少数者や弱者への隠微な差別を繰り返すことで、差別趣味の人々の需要を満たしている。