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 アメリカが大変なことになっている。
 海外のニュースサイトやTwitter経由で流れてくる動画を見る限り、ほとんど内戦が勃発しているように見える。
 こういう時は、頭を冷やさないといけない。

 現地で暮らしている複数の日本人の証言に耳を傾けると、デモが暴徒化しているのはあくまでも一部のできごとであるようで、アメリカ全土に火が放たれているわけではない。報道メディアのカメラが、武装した警官隊と群衆との衝突のような、扇情的な映像をとらえるのは、彼らの責務でもあれば商売でもある。しかし、その映像をリビングの液晶画面越しに視聴しながら、全米がニュース映像そのままの混乱に陥っていると考えるのは、やはり早計だ。

 とはいえ、トランプ大統領のTwitterを眺めていると、やはり心配になる。彼は、デモのために集まっている市民や、暴徒化しつつある一部の人々をむしろ煽りにかかっている。それどころか、この混乱に乗じて、全米の市民をトランプ派と反トランプ派に分断することを画策しているようにさえ見える。

 太平洋をはさんだこちら側から事態を傍観していて、とりわけ物騒に感じられるのは、トランプ大統領が、このたびのデモの暴徒化を「ANTIFA(アンティファ)」のせいだと、いとも無造作に決めつけているその、ものの言い方だ。

 トランプ大統領は、5月31日に自身のTwitter経由で
 《The United States of America will be designating ANTIFA as a Terrorist Organization.》
 (アメリカ合衆国は、ANTIFAをテロ組織として指定することになる)
 と断言している。

 このトランプ大統領の無思慮なツイートを鵜呑みにして、わが国でも、ANTIFAをまっすぐに「テロ組織」と断定したうえで、そのANTIFAと関係のありそうな団体や組織をあげつらいにかかっている論客や、アメリカ政府がANTIFAを「テロ組織」として公式に認定したかのごとく、既定の事実とした前提で原稿を書きはじめてしまう軽率な人々がポツポツとあらわれている。なんともバカな反応だと思う。トランプさんのツイートは、最低でも3日は「寝かせて」からでないと実戦使用できない。この程度のことは、ぜひ心にとめておきたいものだ。