トランプ大統領がまたぞろ奇妙なことを言い始めている。
 読売新聞が伝えているところによれば、彼は、このたびのコロナ禍について
 「米国が経験した最悪の攻撃だ。(旧日本軍に攻撃された)真珠湾よりひどい」
 と述べている。

 なんと。
 トランプ氏は、新型コロナウイルスによる被害が「中国による攻撃」であると言いたいようだ。

 彼は、これまでにも、ツイッター上の書き込みやテレビ演説の中で「中国ウイルス」という言葉を繰り返し使うことを通じて、このたびの新型コロナウイルスが「中国発」(つまり中国で生まれて世界に伝播した)の災厄である旨をほのめかしていた。それが、ここへきて、ついに真正面からの中国攻撃に舵を切ったわけなのだろう。いずれにせよ、トランプ氏は、国務長官のポンペオ氏あたりを巻き込んだ上で、件のウイルスが武漢の研究所から外に出たものであるを、アメリカ合衆国政府の公式見解として、あらためて真正面から主張し始めている。容易ならざる事態だ。

 これは、ただごとではない。
 ふつうに考えて、宣戦布告に近い言明だと思う。

 思い出すのは、ブッシュ元大統領が、例の9.11の事件の直後
 「これは戦争(“act of war”)だ」
 と断じた時のことだ。

 あの時、私は
 「なにを大げさな(笑)」
 と思って笑っていた、愚かな日本人の一人だった。というのも、ブッシュ氏の口から出てきた「戦争」という言葉を、単なる比喩以上の言葉として受け止めることができなかったからだ。
 なんという愚かな耳を持ったお気楽な外国人であったことだろう。