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 最初に宣伝をさせてください。

 単著が2冊同時に出ます。

 1つ目は、当連載をまとめた書籍です。タイトルはズバリ「ア・ピース・オブ・警句」(発行:日経BP、価格:1600円+税、発行日2020年3月16日、総ページ数368ページ)です。集大成の意味をこめて、あえて連載タイトルをそのまま表紙に持ってくることにしました。内容的には、2015年から2019年までの5年間の連載コラムから、主に東京五輪パラリンピック2020関連と、政権まわりの出来事を扱ったテキストを採録しています。

 一読した方は、ご自身が、この5年間に自分のまわりに起こった出来事の多くを、不思議なほどきれいに忘れてしまっていることに思い至ることでしょう。多くの日本人にとって、この5年間は、夢の醒めぎわに見るデジャブのような不可思議な期間でした。自分の仕事として、この困難な時代の記録を5年分積み上げ得たことの歴史的な意味を感じています。

 もう1つの本は、「小田嶋隆のコラムの切り口」(発行:ミシマ社、価格1500円+税、発行日:2020年3月20日、総ページ数:190ページ)というタイトルのコラム集です。意図した結果ではないのですが、「ア・ピース・オブ・警句」とはまるで違うタイプの文章が集められています。はじめて読む読者は、おそらく、同じ著者が書いた書籍であるとは思えないはずです。それほど、テーマ、肌触り、手法のすべてが、対照的に仕上がっています。本書は、「コラムの書き方」という切り口から、主題の見つけ方、料理の仕方、オチの付け方、会話の運用法などなど、読み手の側からの分類ではなく、書き手の側の手練手管から分類する視点で、商品見本としてのコラムを陳列しています。「コラム」と呼ばれる形式の多彩さと可能性を、十全に表現した書籍であると自負しています。

 じっくり考えて思考の枠組みを広げたいと考えている人には「ア・ピース・オブ・警句」を、笑ったりびっくりしたりしながら感受性の限界を拡張したい読者には「小田嶋隆のコラムの切り口」をお勧めします。というよりも、両方いっぺんに読むことで、免疫力が上がるはずなので、健康管理のために、ここは一番、同時並行で読みすすめるのが最適解です。ご購入、ご購読のほど、よろしくお願いいたします。

 さて、今回は、冒頭で押し付けがましい告知をカマしてしまったので、あんまり難しい文章を書いて、読者に負担をおかけすることがはばかられる。なので、単にこの10日ほどの間にぼんやりと考えていたあれやこれやを、つらつらと書き並べることにしたい。あえてタイトルをつけるなら、「パンデミックと働き方改革」あるいは「日本人の放課後」「フリーランスの見る夢」てな調子の文章になると思う。まあ、どこに着地するのかは、書き終わってみるまでわからないわけだが。

 この2~3日の間に、いくつかのソースから、政府がフリーランスの就業者への休業支援を検討しはじめている旨のニュースが流れてきた。

 朗報だと思う。というのも、休業支援は、これまで、有給取得者への賃金助成金を中心に話が進められていて、有給休暇の対象外である非正規の労働者や、ましてフリーランスの就業者は、無視されている形だったからだ。

 その意味で、政府による当初の取り組みから比べて改善していることは確かだ。
 とはいえ、細かいところを見ると、いろいろと失望させられる。

 リンク先のNHKのニュースが伝えているところでは、政府は
 《―略― 臨時休校に伴って仕事を休んだ保護者への支援として、業務委託を受けて働くフリーランスの人にも1日当たり4100円の定額を支援する方向で最終的な調整を進めています。―略―》

 といったあたりの施策を考えているようだ。

 この文面を見る限り、政府は、休業に追い込まれたすべてのフリーランスに休業補償をするつもりは持っていない。補償の対象になるのは
 「業務委託を受けて働いている」
 「臨時休校に伴って仕事を休んだ保護者」

 という二つの条件を満たしているケースに限られる。

 思うに、これはフリーランスで働く人間の現実にそぐわない。