松尾局長は、この時、
 「口裏を合わせる」
 ことを求められていた。

 これまで、幾人の高級官僚がこのこと(←政権中枢の発言に事後的に口裏を合わせること)を求められ、そしてそのミッションを果たすことによって、自らの人間の尊厳を喪失してきたことだろうか。

 おそらく、公衆の面前であからさまなウソをついてしまった人間のうちの何割かは、二度とそれ以前の自分に戻れなくなっているはずだ。

 意に沿わぬウソをつかされた人間は、精神的に死んでしまう。

 中には本当に死んでしまう人もいる。

 松尾さんには、ぜひ立ち直ってもらいたいと思っている。

 やや手加減した言い方をすればだが、私は、安倍総理が、自らの過去の言動と現在の立ち位置との間に生じる矛盾を覆い隠すために塗り重ねてきたウソの中には、結果的にウソになってしまった分も含めて、無理のない話もあったのだろうと思っている。

 誰であれ、やっていることと言っていることとの間には、多少の齟齬があるものだし、過去にやってしまったことと、現在やろうとしていることとの間には、多かれ少なかれ矛盾点や食い違いが生じるものだからだ。

 ただ、上の立場の人間がウソを押し通す時、その下で働く人間は、ボスのウソをカバーする立場に追い込まれる。これは、当事者にとっては、非常に苦しいミッションだ。

 安倍さんは、その、とてつもなく不毛で罪深い仕事を、自分の足元にいる非常に広範囲の人間たちに強要している。私の個人的な考えでは、安倍政権の罪は、ウソをついたことそのものよりも、部下にウソをつかせ続けてきたことの中にあると思っている。

 ウソをつかされた人間は、死んでしまう。

 自分のウソを糊塗するためにウソをつくのもそれはそれでキツい仕事だが、他人が勝手に言い放ったウソの尻拭いのために自分が人前でウソをつかねばならない立場に追い込まれることは、誇り高い人間にとっては、死を意味している。

 ANAホテルの広報担当者が、新聞の取材に対して首相答弁を否定する回答をした旨の記事を受けて、2月の17日に、私は以下のようなtwを投稿した。ぶら下がっているスレッドともどもご笑覧いただきたい。

 《ホテルにとっての一番の財産は信用だ。ただ、信用の置けるホテルには二種類ある。ひとつは、太客がウソをついた時に口裏合わせをしてくれるホテルで、もうひとつは法と正義と真実を大切にするホテルだ。どちらのホテルに信用を置くのかは人それぞれだ。個人的には後者を信用する人間を信用したい。》

 ここで言う、「信用の置けるホテル」のうちの前者(←太客がウソをついた時に口裏合わせをしてくれるホテル)は、具体的には、ホテルニューオータニを指している。