松尾局長は、山尾氏の
 「なぜ2月12日の時点で解釈変更に言及せず、解釈を引き継いでいると説明したのか」
 という追い打ちの質問に対して
 「つい言い間違えた」
 と答えている。

 これには驚いた。あんまりびっくりしたので、この時のやりとりは、わざわざネット動画を探しに行って確認した。

 と、松尾局長は、本当に
 「つい言い間違えた」

 と言っている。なんと。本当に、生身の人間が、国会で「つい言い間違えた」と言わされていたのである。

 私自身、こんな国会答弁を聞いたのは初めてだ。

 見ていて気の毒になった。いや、動画を見てもらえればわかる。彼女の表情はまったく生気を失っている。これほどまでにいたましい人間の振る舞い方を見て、心を痛めない人間はそんなにいないはずだ。

 松尾局長はさらに
 「隠すつもりはなかったが、聞かれなかったので答えなかった」

 と述べている。

 これにも、びっくりだ。こんなバカな答えがあるものだろうか。

 でもって、質問の最後の部分を記録した映像には、答弁席に立ち尽くす松尾局長に向かって、後方の閣僚席に座っている茂木外務大臣が、
 「帰れ!帰れ!」
 と促す声が記録されている。茂木大臣が発動したあからさまな恫喝については別の機会に別の場所で触れることがあるかもしれない。とりあえずここではこれ以上の言及はしない。「あきれた」とだけ言っておく。

 大切なのは、松尾局長が、ご自身の12日の答弁と、安倍首相が国会で述べた言葉の不整合を調整して、首相の発言に沿って「現在」の法解釈を合わせるべく、無理な路線変更を余儀なくされたことだ。

 つまり、彼女は「辻褄を合わせる」ミッションを負っていたわけだ。

 そこのところから考えて、松尾局長が、「つい言い間違えた」などという愚かしい答弁をせねばならなかったのは、彼女が無能だったからではない。愚かだったからでもない。松尾局長が、見苦しい答弁をせねばならなかったのは、彼女が正直な回答をブロックされていたからだ。

 本当のことを言ってはいけない立場に立たされた時、正直な人間は、正体を失う。自分自身をさえ失う。

 彼女は、自分が従事している仕事の職業倫理に反する回答を求められ、それを衆人環視の中で自分の口から吐き出さなければならなかった。

 とすれば、ロボットみたいな無表情で機械的な発話を繰り返すか、でなければ、3歳児の如き無垢を発揮するほかに対処のしようがないではないか。