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 「全員団結プロジェクト」をごぞんじだろうか。

 私は、つい昨日、その存在をはじめて知った。わがことながら、自分の情報感度の鈍さに落胆している。

 毎日新聞が伝えているところによれば、このプロジェクトは、2019年の8月にはすでに始まっている。それが、なぜなのか、20年になってから、突如として、SNS上で賛否の声が渦巻く展開になっているのだという。

 私自身は、賛否をどうこう言う以前に、なにより、そのデザインのチープさに心を打たれた。

 特にキャンペーン公式サイトの、「全員団結について」と題された説明のページがすごい。

 このデカいポップ体の赤文字がひしめき合う画面を一瞥して、最初に思い浮かべたのは、あの懐かしい大学の「立看」(タテカン)だった。

 念のために解説しておく。

 立看とは「立て看板」の略称で、1960~80年代の大学構内には当たり前のように見られた左翼学生による手製のアジテーション看板を指す。ベニヤ板と角材で作られた木枠に模造紙を貼って、その上に、朱色や黒色のペンキで政治的なスローガン(「米帝打倒!」とか「中教審粉砕!」だとか)を大書したものが多かった。私の世代の、学生運動のピークから5年ほど乗り遅れた学生たちは、その立看の中国共産党風の簡体字を駆使した独特の右肩上がりの角張った書体を「左翼文字」と呼んで、なにかと冗談のタネにしたものだった。

 もっとも
 「西洋史の◯◯先生とかは、レポートの中で闘争の闘の字を斗で書くと成績がワンランクアップするらしいぞ」

 という定番の軽口は、まるっきりの都市伝説でもなかった。いや、確認を取ったわけではないのだが。

 大学のキャンパスが左翼学生による立看で埋め尽くされていたあの時代は、街宣右翼の活動が活発だった時代でもあった。で、その街宣右翼の皆さんが町中の電柱やガードレールに貼り付けるアジビラの中で躍っていた文字は、書体や用語法こそ左翼文字とは一線を画していたものの、赤文字と体言止めとビックリマークを多用するそのテイストにおいては、立看の中の左翼文字と選ぶところのない代物だった。