全7050文字

 この段階に至ってなお、正面突破で知らぬ存ぜぬを押し通せると考えていた長官の自信は、おそらく森友問題に関する財務省の文書や、加計問題で萩生田文科相(当時は官房副長官)の名前が出たと言われている文科省内の文書について、
 「廃棄した」
 「分からない」

 の一点張りで、逃げ切った経験から導き出されたものなのだろう。

 しかしながら、1万人以上の招待者がいて、映像やら写真やらが無数にインターネット上にアップされているイベントの実態は、党本部がどんなに頑張ってももみ消せるものではない。1万人の生きている証言者の口を封じることは、おそらく、北朝鮮の政府にとってさえ簡単なことではないはずだ。

 そんなわけで、菅官房長官は、13日になると、恥も外聞もなく前言を翻して、大あわてで来年の「桜を見る会」を中止する旨を発表する 事態に追い込まれる。

 菅官房長官、あるいは安倍首相が「桜を見る会」の中止を決断した理由は、問題の深刻さを理解したからというよりは、何百人何千人の生き証人をかかえているこの案件について、口封じや証拠隠滅が不可能である旨をいよいよ本格的に悟ったからなのだと思う。

 今回の中止の発表について、いくつかのメディアが
 「電光石火」
 「素早い決断」

 という言葉を使ってその決断の速さを評価しているが、私は必ずしもそう思っていない。

  検索してみると、赤旗の日曜版がこの問題をはじめて記事にしたのは、10月13日だ。

 とすると、この時点から数えて、官邸が「桜を見る会」中止の決断に至るまでには、約1カ月以上の時日を要したことになる。

 遅すぎる。

 でもまあ、彼らがタカをくくっている通りなのだとしたら、だらだらと様子見をしていた彼らの判断は、結局のところ、正しかったということになる。

 彼らが正しいのかもしれない。

 ということは、われら国民がまるごと間違っているわけだ。

 いずれにせよ、あと1週間程度で答えが出る話ではある。

 あんまり見たくないわけだが。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

小田嶋隆×岡康道×清野由美のゆるっと鼎談
「人生の諸問題」、ついに弊社から初の書籍化です!

 「最近も、『よっ、若手』って言われたんだけど、俺、もう60なんだよね……」
 「人間ってさ、50歳を超えたらもう、『半分うつ』だと思った方がいいんだよ」

 「令和」の時代に、「昭和」生まれのおじさんたちがなんとなく抱える「置き去り」感。キャリアを重ね、成功も失敗もしてきた自分の大切な人生が、「実はたいしたことがなかった」と思えたり、「将来になにか支えが欲しい」と、痛切に思う。

 でも、焦ってはいけません。
 不安の正体は何なのか、それを知ることが先決です。
 それには、気心の知れた友人と対話することが一番。

 「ア・ピース・オブ・警句」連載中の人気コラムニスト、小田嶋隆。電通を飛び出して広告クリエイティブ企画会社「TUGBOAT(タグボート)」を作ったクリエイティブディレクター、岡康道。二人は高校の同級生です。

 同じ時代を過ごし、人生にとって最も苦しい「五十路」を越えてきた人生の達人二人と、切れ者女子ジャーナリスト、清野由美による愛のツッコミ。三人の会話は、懐かしのテレビ番組や音楽、学生時代のおバカな思い出などを切り口に、いつの間にか人生の諸問題の深淵に迫ります。絵本『築地市場』で第63回産経児童出版文化賞大賞を受賞した、モリナガ・ヨウ氏のイラストも楽しい。

 眠れない夜に。
 めんどうな本を読みたくない時に。
 なんとなく人寂しさを感じた時に。

 この本をどこからでも開いてください。自分も4人目の参加者としてクスクス笑ううちに「五十代をしなやかに乗り越えて、六十代を迎える」コツが、問わず語りに見えてきます。

 あなたと越えたい、五十路越え。
 五十路真っ最中の担当編集Yが自信を持ってお送りいたします。