五輪組織委の取り組みを、あからさまに嘲笑するのは、今後の取材先との関係から考えてはばかられる。かといって大真面目に紹介すれば、報道機関としての見識を疑われかねない。
なので、軽く「失笑」しつつ、あくまでも一歩引いた立ち位置からご紹介するにとどめる、といったあたりが「落としどころ」になる。で、その「落としどころ」が、具体的には、ダブルコーテーションで囲った”奇策”というフレーズだったわけだ。
実際、このニュースには、五輪組織委の正気を疑うにふさわしい、匂い立つような愚かしさが横溢している
- 300キロの氷塊だろうが3万トンの氷河だろうが、そんなものでオープンエアの五輪会場の気温を下げることが可能だと考えた人間は、高校の物理の授業をきちんと受けていたのだろうか。
- 仮に人工降雪が何かの演出として有効なのだとして、このアイデアの発案者は、屋根のない観客席への事実上の降水が、観客にとって迷惑以外の何かである可能性について、ほんの少しでも考慮したのだろうか。
- バカなプランを思いついてしまったところまでは仕方がないのだとして、そのバカなプランについて実験が必要だという旨を議決してしまった会議は、そもそもいったい誰のために何を話し合う機関なのだろうか。
- バカなプランについてのバカな合意を議論の段階でツブすだけの見識を持った委員が一人もいなかったのだとすると、そもそも組織委なるものに存在意義はあったのだろうか。
……と、考えれば考えるほど、疑問点はいくらでも出てくるのだが、記事は、そこのところをさらりと流しつつ
《―略― 実験時は曇りで風も吹いて流されやすかったこともあり、降雪前後で周辺の気温に変化はみられなかったという。
組織委の担当者は「空気全体を冷やすというほどのものではない」としつつ、「暑い日ならば観客にとっては楽しいイベントになる」と話した。
今後、コストも含めて人工降雪の効果を詳細に検証し、本番時の導入を検討する。》
と、あくまでも冷ややかな現在形の語尾で文末を締めくくっている。
見事な手腕というのか、まあ、記者も苦労したわけなのだな。
このほか、この夏、五輪組織委が打ち出してきたプランには以下のようなものがある。
(1)《五輪テストイベントで暑さ対策検証 朝顔の鉢植えで「視覚的にも涼しく」》
(2)《五輪マラソン暑さ対策、MGCで検証 かち割り氷など配布》
ほかにも、リンクはもう消えてしまっているのだが、個人的にクリップしておいたNHKニュースの中に、以下のような一節が含まれている。
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