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 自分が馬券を買っていない競馬中継のつまらなさを知っている人なら、逆の意味で見当がつくと思うのだが、なんであれ一票を投じておくことで、政治を見る目は、よりリアルになる。

 最後に個人的な話をする。

 この4月に投開票がおこなわれた統一地方選で、私が住んでいる地域では、区長選挙が実施された。選挙戦は、公示の時点で84歳になる現職と、新人で都議から転じた30代の候補者との一騎打ちになると見られていた。

 私自身は、当初、この選挙について、さしたる関心を抱いていなかったのだが、ツイッターのタイムラインに流れてくる若い候補者の言動のいくつかを見るうちに、私は、彼を落選させなければいけないと考えるようになった。

 というのも、若い候補者は、その時点で自分がいずれ国政に打って出ることを隠そうともしていなかったからだ。

「ってことは、うちの地域の区長のポストは、あんたにとって踏み台のひとつに過ぎないってことか?」
 と、住民として、そう受け止めないわけにはいかなかった。

 もっとも、84歳の現職区長を積極的に支持できるのかというと、それも簡単なことではなかった。

 年齢も年齢だし、それ以外にも、やがてめぐってくることがわかっていたはずの区長選に向けて、後継者を指名して後援会を一本化することができなかったのは、失態だと思ったからだ。

 決め手となったのは、若い候補者を支持するアカウントが発した
《おい、東京都○区の若者、選挙行け! もしかしたら「将来の総理大臣の第一歩をオレは投票したんだぜ」と言えるかもしれねぇぞ》
 という高飛車なツイートだった。

 こんな連中にうちの地域の大切なポストを踏み荒らされてはかなわない……そう思って私は、84歳の現職区長に投票した。

 その私の一票は、結果として、投票した候補者が当選するという10何年かぶりの喜びをもたらした。

 当選後3ヶ月を経過して、区長は、意外なほど元気に活躍している。

 私自身は、まだ、支持とか応援というまでの気持ちには至っていないのだが、投票した責任は少し感じている。

 誰かを落とすために投じた一票が、結果としてほかの誰かの政治生命を延命させることもある。

 そうやって世界はまわっている。

 区長にはがんばってほしいと思っている。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

小田嶋隆×岡康道×清野由美のゆるっと鼎談
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 「最近も、『よっ、若手』って言われたんだけど、俺、もう60なんだよね……」
 「人間ってさ、50歳を超えたらもう、『半分うつ』だと思った方がいいんだよ」

 「令和」の時代に、「昭和」生まれのおじさんたちがなんとなく抱える「置き去り」感。キャリアを重ね、成功も失敗もしてきた自分の大切な人生が、「実はたいしたことがなかった」と思えたり、「将来になにか支えが欲しい」と、痛切に思う。

 でも、焦ってはいけません。
 不安の正体は何なのか、それを知ることが先決です。
 それには、気心の知れた友人と対話することが一番。

 「ア・ピース・オブ・警句」連載中の人気コラムニスト、小田嶋隆。電通を飛び出して広告クリエイティブ制作会社「TUGBORT(タグボート)」を作ったクリエイティブディレクター、岡康道。二人は高校の同級生です。

 同じ時代を過ごし、人生にとって最も苦しい「五十路」を越えてきた人生の達人二人と、切れ者女子ジャーナリスト、清野由美による愛のツッコミ。三人の会話は、懐かしのテレビ番組や音楽、学生時代のおバカな思い出などを切り口に、いつの間にか人生の諸問題の深淵に迫ります。絵本『築地市場』で第63回産経児童出版文化賞大賞を受賞した、モリナガ・ヨウ氏のイラストも楽しい。

 眠れない夜に。
 めんどうな本を読みたくない時に。
 なんとなく人寂しさを感じた時に。

 この本をどこからでも開いてください。自分も4人目の参加者としてクスクス笑ううちに「五十代をしなやかに乗り越えて、六十代を迎える」コツが、問わず語りに見えてきます。

 あなたと越えたい、五十路越え。
 五十路真っ最中の担当編集Yが自信を持ってお送りいたします。