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 私自身、長らく
「うるせえばか」
 と思っていた。

 じっさい、40歳になるまで、私は有効投票をしたことがない。
 両親や周りの人間がグダグダうるさいので、投票所に足を運ぶところまでは付き合ったものの、どうしても候補者の名前を書く気持ちになれなかったからだ。

 だから、投票用紙に自作の俳句を書き込んだり、好きなロックスターの名前を書いたりというカタチでその場をしのいでいた。
 まあ、バカな話だ。弁解の余地があるとは思っていない。

 ただ、ここで大切なのは、私が、単に
「面倒くさいから投票には行かないよ」
 という消極的な理由で投票を回避していたのではない、ということだ。

 現に私は何回か投票所に足を運んでいる。
 それでもなお、私が有効な一票を投じなかったのは、私自身が、積極的に投票をボイコットする気持ちを持っていたということだ。
 まあ、スネていたわけですね。

 あなたの一票があなたの未来を作るのです的なおためごかしの演説に、なんだか猛烈に腹を立てていたということです。
 はい。バカな反応でした。
 反省しています。

 ただ、40歳を過ぎた頃からは、毎回投票に行っている。
 理由は、必ずしも一票の重みを自覚しはじめたからではない。
 私が投票するようになったのは、メディアを通じて発言する機会を持つようになったことと関連している。

 もう少し具体的に言うと、公共的な場所で、「言論人」に近い扱いを受けている人間が
「えーと、選挙には行っていません」
「えっ? 投票ならしてませんが?」
 みたいな発言を垂れ流すことが、絶対的に許されないことを、いくつかの機会を通じて思い知らされたからだ。

特にインターネットが普及してからは、
「オダジマは投票ボイコット組らしいぞ」
「あいつ選挙にさえ行かないんだとさ」
「そのくせ、政治には一家言あるみたいだぜ」
「最悪だな」
「クソだな」

 という感じの噂(まあ、半ば以上は事実だったわけだが)にずいぶん苦しめられた。

 自業自得であることはよくわかっている。とにかく、私としては、説教のつむじ風みたいなコトバの塊が選挙の度に訪れることに閉口して、有効投票を実行する方向に方針変更した次第なのである。