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 だから、芸能界で「闇営業」という言葉が使われた場合、それは、ある種の先祖返りの中で、暴力団の仲介を得た芸能活動が展開され得るという、ごく自然な推理を述べたまでのことだ。

 実際、裏世界の人間は芸能を好む。

 芸能界で暮らしている人々の中にも、任侠の世界への親近感を隠さない人々が少なからず含まれている。

 とすれば、「闇営業」は、「ヤの字の人々からのお呼ばれ」のことなのだろうなと考えるのは決して無理な連想ではない。

 ところがどっこい、「闇営業」は、単に「事務所を通さない仕事」であるらしい。

 なんという膝カックン案件であろうか。

 私が知っている範囲では、昔から同じ意味で使われていた言葉に「取っ払い」というのがある。

 20年ほど前までは、吉本興業所属の芸人の中にも、この「取っ払い」をネタに客を笑わせている連中がいた。

 というよりも、つい最近まで、
 「ヨシモトの搾取構造」
 「うちの事務所はごっつうカネに汚いでぇ」
 というのは、ヨシモトの芸人の定番のぶっちゃけネタだった。

 「あんたホンマおもろいなあ。ギャラ出したいくらいや」
 「ほな、そこんとこはとっぱらいでお願いしますわ」
 「あほか。マネージャーそこにおるやないか」
 という感じのやりとりを、私が高校生だった頃、誰だったかが演じていた記憶がある。
 誰だったかは忘れた。たぶん、もうこの世の人ではないのかもしれない。

 その「取っ払い」が「闇営業」と呼ばれるようになったのだな。

 なるほどね。