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 同じ意味で、ハイヒールやパンプスについて
 「強制の意図はない」
 と考えている現場の責任者は多い。

 彼らの意識としては、
 「自分が具体的な指示や文書を通じて、ハイヒールやパンプスの着用を強制したことはない」
 と思いこんでいる。

うっかりすると彼らは
 「自分がきれいに見られたい一心で無理なヒール履いてるくせして、それを強制されたとか言い出すってどんな被害者意識なんだ?」
 くらいに受けとめている。

 とにかく、この問題についてはっきりと認識しておかなければならないのは、現実として
 「誰も指示なんかしていないのに、職場の空気としてパンプスを履かざるをえない圧力が一人ひとりの女性従業員を圧迫している」
 ことだ。

 別の言い方をすれば
 「ハイヒールを履け」
 「パンプスを履け」
 という明確な言葉なりルールに裏打ちされている明らかな強制よりも、

 「職場にはふさわしい服装で出勤すべきだ」
 という、
 「社会通念」
 によってやんわりと推奨されているパンプス着用義務の方が、問題の根は深いということでもある。

 根本大臣には、半日でもよいから、5センチ以上のハイヒールを履いて業務をこなすことを経験してほしい。

 私は、20代の頃、さる雑誌の企画で女装をしたことがあって、以来、ハイヒールにはトラウマをかかえている。

 それゆえ、ああいうものを部下に履かせて平気でいられる人間が、人を使ってよいはずがないとも思っている。

 してみると、ハイヒール強制の解除を叫ぶより、管理職に就く男性社員に、一定期間の女装勤務を強制する方が、この問題を共感とともに解決するソリューションとしては現実的だろう。

 ぜひ、実現してほしい。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

『街場の平成論 (犀の教室)』(晶文社)


どうしてこんな時代になったのか?
「丈夫な頭」を持つ9名の論者による平成30年大総括

戦後史五段階区分説 ――内田樹
紆余曲折の日韓平成史 ――平田オリザ
シスターフッドと原初の怒り ――ブレイディみかこ
ポスト・ヒストリーとしての平成時代 ――白井聡
「消費者」主権国家まで ――平川克美
個人から「群れ」へと進化した日本人 ――小田嶋隆
生命科学の未来は予測できたか? ――仲野徹
平成期の宗教問題 ――釈徹宗
小さな肯定 ――鷲田清一