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 この点についても同じ日にツイートしているので、参考までに引用しておく。

 《「怒り」という感情は快感をもたらすのだろうね。
だから嗜癖する人は嗜癖する。
というよりも、怒りは悲しみに比べてずっと対処しやすい感情で、だから、あるタイプの人々は、悲しむべき場面であっても、なんとかそれを怒りに変換しようと躍起になっていたりする。
いずれにせよはた迷惑な話だ。》リンク

 《なるほど。ツイッターは、怒りや憎しみの持って行き先を探している人々のための、マッチングサイトでもあるのだな。》リンク

 この世界の中には、何かに怒っていたり、誰かを憎んでいたりしないと自分を保てない人々が一定数暮らしている。彼らの心にはまず怒りがあって、それゆえ常にその怒りの持って行き先を探していたりする。

 思えば、犯人もそういう人間の一人だったのかもしれない。
 人々による怒りの表明とその怒りへのより多数の同調は、鬱屈した怒りを内在させている人々にとっての発火点になり得る。

 その意味で、テロ報道はテロを呼ぶし、過剰な自殺報道は新たな自殺を誘発するし、扇情的な通り魔犯罪への言及はさらなる同種の事件へのヒントになってしまいがちだ。

 おそらく、今回のこの原稿のコメント欄にも、怒りのコメントがたくさん投じられるだろう。

 怒りを吐き出すことで、すっきりするタイプの人もいるが、怒りを表現することでさらなる怒りに嗜癖していくタイプの人間もいる。

 こういう原稿は、なるべくヌルく締めくくりたい。

 ここは一番
 「そんなおこらんといてや」
 とつぶやいておく。

 関西方面のアクセントで読んでいただくとありがたい。
 さらば。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

『街場の平成論 (犀の教室)』(晶文社)


どうしてこんな時代になったのか?
「丈夫な頭」を持つ9名の論者による平成30年大総括

戦後史五段階区分説 ――内田樹
紆余曲折の日韓平成史 ――平田オリザ
シスターフッドと原初の怒り ――ブレイディみかこ
ポスト・ヒストリーとしての平成時代 ――白井聡
「消費者」主権国家まで ――平川克美
個人から「群れ」へと進化した日本人 ――小田嶋隆
生命科学の未来は予測できたか? ――仲野徹
平成期の宗教問題 ――釈徹宗
小さな肯定 ――鷲田清一