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 第19回統一地方選の投票日を間近に控えた4月の20日、安倍首相が大阪市中央区にある吉本興業のお笑い劇場「なんばグランド花月」を電撃訪問した。

 このニュースが報じられると、

「お笑いの政治利用ではないのか」
「むしろ政治のお笑い化だろ」
「いや、ふつうに、憲法改正に向けた維新との連携をにらみつつ、結果として党の大阪府連を冷遇することになった先の府知事・市長ダブル選挙時の対応を埋め合わせるための小芝居なんだと思う」
 などと、ネット上には、お笑いおよび政治にシンパシーなり反発なりを抱いている人々の雑多な書き込みが殺到して、一時は炎上に近い騒ぎになった。

 今回の総理の大阪訪問の目的は、ツイート公式的には「6月のG20首脳会談で使用する大阪迎賓館の視察」ということになっている。

 してみると吉本興業の舞台への出演は、

「ついで」
「おまけ」
「しゃれ」
「思いつき」
 と見なすのが、自然な態度なのかもしれない。

 どっちにしてもたいした問題ではない。

 というよりも、この種のネタにひっかかってリアクションの原稿を書いてしまうのは、ライターの仕事ぶりとしてはなはだ筋がよろしくない。

 なので、この件は無視する。
「今日はこれくらいにしといてやる」
 的なセリフも言わないでおく。
 黙殺ほど雄弁なリプライはない。

 だから私は何も言わない。
 さて、首相をなんばグランド花月の舞台に迎えた数日後、吉本興業は、NTTと連携して「教育コンテンツ」の制作・配信に乗り出す方針を発表した。資金の一部は「クールジャパン機構」が負担するのだという。びっくりだ。

「教育って、ヨシモトが、か?」
「つい10年ほど前までは、何かにつけて反社会勢力との交際が報じられていた会社だぞ」
「そもそも創業者一族が暴力団関連の人物と浅からぬ縁を持っていたことは、多少とも芸能の世界に通じる者にとっては常識に属する話だったんじゃないのか?」 「吉本興業に教育事業ができるというのなら、ジャニーズ事務所は新皇室を立ち上げられるだろうし、AKBグループあたりは女子大を開校できるだろうな」 「クールジャパンの関係者はアタマが沸いてるんとちがうか?」
 と、当然のことながら、SNSは大騒ぎになった。

 このニュースをネット上で見た直後、私は、ツイッター上に以下の文言を書き込んだ。

《クールジャパンって、つまるところAKB界隈およびエグザイル周辺ならびに吉本界興行をひとっからげにまとめあげた統合型ポピュリズム娯楽連合体を主軸とした衆愚慰安文化施策なわけで、こんなものに巨大な予算を振り分けていることひとつをとっても、日本の未来は明るくないと思う。》

 脊髄反射で書いたテキストだったからなのか、「吉本興業」と書くべきところを「吉本界興行」と誤記している。なさけないタイポだ。