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 現状では、運動麻痺、言語障害はまったくない。記憶や思考力について、細かいところは永遠にわからないが、本人の自覚では問題はない。問題を自覚するに足る能力を喪失しているという見方も可能なのだろうが、その見方は採用しない。理由は、不快だからだ。

 本当は、ごく簡単に今回の経過を報告した上で、このほど政府の経済財政諮問会議が打ち出してきた「人生再設計第一世代」という言葉についてあれこれ検討するつもりでいたのだが誌面が尽きてしまった。なので、この話題についてはまた稿を改めて論じてみたいと思っている。

 一言だけ申し上げるなら、「人生再設計第一世代」は、粗雑で無神経なレッテルだと思っている。

 基本的には
 「一億総活躍社会」
 「働き方改革」
 「人づくり革命」
 と同じく、国民を将棋の駒かレゴのピースみたいに扱う気分の人間が発案した標語だと思うのだが、今回のこれはとりわけ異様だ。もしかしたら、われわれは緊急事態に足を踏み入れつつあるのかもしれない。

 とはいえ、一方で、

 「まあ、どうせこういう感じのがやってくると思ってたよ」
という醒めた感慨もある。

 この感慨が正常化バイアスの結果でないことを祈りたい。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

『街場の平成論 (犀の教室)』(晶文社)


どうしてこんな時代になったのか?
「丈夫な頭」を持つ9名の論者による平成30年大総括

戦後史五段階区分説 ――内田樹
紆余曲折の日韓平成史 ――平田オリザ
シスターフッドと原初の怒り ――ブレイディみかこ
ポスト・ヒストリーとしての平成時代 ――白井聡
「消費者」主権国家まで ――平川克美
個人から「群れ」へと進化した日本人 ――小田嶋隆
生命科学の未来は予測できたか? ――仲野徹
平成期の宗教問題 ――釈徹宗
小さな肯定 ――鷲田清一