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 何を言いたかったのかというと、発症当日、私がなにかにつけてジョークを連発していたのは平静さを装うためで、ということは私は動揺していたということだ。

 動揺しているならしているで、その動揺した気持ちに素直に従って、病院にすっ飛んで行けばよさそうなものなのに、男という生き物はどういうものなのか一番くだらないところで一番くだらない見栄を張るようにできている。

 反省しなければいけない。

 午後、いったん帰宅した後、自宅から直近の総合病院を訪れてみると、すでに外来の診療時間は終わっていて、救急外来の担当医が、その場でCTの検査を手配してくれた。

 その時に受けた説明によると

 「まず脳に出血がないかどうかを確かめるために、CTを撮ります。で、出血が無いことが確認できたら、今夜のところはとりあえず血液をサラサラにする薬を飲んで、明日の朝、あらためて脳神経外科に予約を入れておきますので、MRIでより詳しい脳内の診断をしてもらってください」
 ということだった。

 結果、幸運にも脳出血はなかった。
 大事には至らなかったわけだ。

 とはいえ、無邪気に幸運を喜ぶ気持ちになってはいけないと思っている。

 翌日、MRIの検査を受けて検査室を出ると、車椅子を押した姿のナースさんが待っている。

 「これはもしかして私の乗り物ですか?」
 と、私はこういう場面でもつまらないジョークを言わずにおれない。

 主治医の指示で、急性期の脳梗塞の患者については急に転倒するなど万が一の事故を防ぐために、車椅子で病室まで運ぶことになっているのだそうだ。

 とにかく、そんなこんなで、MRI検査室から出てそのまま入院という運びになった。

 以来、10日ほどがたつ。

 その間、毎日点滴(最初の2日間は24時間の点滴だった)を続けながら、ホルター心電図、頸動脈のエコー、心臓のエコーなどの検査を受け、土日以外は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるそれぞれのリハビリメニュー(簡単なストレッチや、エアロバイクによる有酸素運動、それから各種の知能テストみたいなもの)をこなした。

 入院患者はそんなにヒマなわけでもない。
 ようやくヒマができると、ヒマを出される。
 というわけで、おかげさまで、土曜日(4月20日)に退院という運びになった。

 医師としては、まだいくつか気になる点があるのだそうだが、自宅も近いことだし、今後は通院でなんとかできると判断したようだ。