「世間をお騒がせして申し訳ない」
 という、不祥事に関連した有名人が謝罪する時に吐き出す定型句が、はからずも示唆しているのは、
 「騒いでる世間って、要するにあんたたちメディアのことだよね」
 ということだったりする。

 つまり、
 「迷惑をかけた」
 と、タレントさんが謝罪する時の具体的な
 「迷惑」
 のうちの半分以上は、メディアが自作しているということだ。なにしろ彼らは、騒動が鎮火しそうになる度に新たな燃料を投下して、コンテンツの延命化を図っている。

 というのも、彼らにとっては、誰かの迷惑のタネを生産し続けることが自分たちの商売の前提だからだ。

 さらに言えば、メディアは、自分たちが騒ぎを起こしている理由すら自作している。

 この理屈はちょっとわかりにくいかもしれない。

 説明すれば以下のようなことだ。
 彼らは、薬物事犯が極めて反社会的かつ破廉恥な犯罪であり、その罪を犯した人間を断罪し追及することこそが自分たちメディアの使命であるという意味の宣伝を繰り返している。

 で、彼らは、違法薬物が人間の精神を蝕む悪魔の粉であり、反社会的組織の資金源でもある旨を、深い事情を知らない視聴者に向けて啓蒙することが自分たちに与えられた神聖な役割であることをアピールしている。

 要するに、テレビの関係者としては、自分たちが、この種の薬物事犯の報道を大きく扱う理由は、VTRの尺を稼ぐためでもなければ、視聴者の注意を惹くためでもなく、ただただ「社会のため」だということを強調しているわけだ。

 でも、本当のところ、彼らは、騒ぎが起こったから報道しているのではない。

 どちらかといえば、メディアが寄ってたかって報道していることで騒ぎが発生していると言った方が実態に近い。

 しかも彼らは、瀧氏の関わった作品が次々とお蔵入りになっているプロセスを粛々と伝えているそのニュースの背景映像として、瀧氏のコンサート映像を流し続けている。

 瀧氏が映りこんでいる映像の販売や配信については、不謹慎だからという理由で自粛させておいて、自分たちは瀧氏の映像を間断なく再生し続けているわけだ。

 無論、彼らには彼らの理屈があって、薬物犯罪の容疑者を断罪する文脈の中で、その容疑者が過去に関わった映像を流すことは何ら問題ないとか、そういう話になるのだろう。

 違法薬物の使用なり所持が発覚すると、その瞬間から苛烈な吊し上げ報道が展開され、あらゆる関連作品が自粛の波に飲み込まれることは、誰であれ制作物に関わっている21世紀の人間であれば、ある程度あらかじめ承知していることだ。

 そういう意味で、メディアによるリンチ報道は、未体験の人間を薬物の誘惑から遠ざける役割を果たしていると思う。

 私自身、「幻覚」だとか「多幸感」だとかみたいな言葉を繰り返し聞かされているうちに、試してみたいと思う瞬間が無いわけでもないのだが、のりピーや瀧さんの扱われ方の残酷さを見ていると、とてもではないが、いまさらハイエナのエサに手を出す気持にはなれない。

 違法薬物への入り口を塞ぐ意味で貢献しているのだとしても、薬物からの出口というのか、依存症に陥った人間を更生に導く意味では、現状のメディア・スクラムは、逆効果しかもたらしていない。

 ひそかに薬物を使っている人間にとっては、薬物摂取の習慣をなんとしてでも隠蔽する理由になるだろうし、現実問題として、内心で薬物依存からの脱却を願っていたとしても、断薬への道を歩み始める手前の段階に
 「人間やめますか」のハードルが課されている現況はどうにもキツすぎる。