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 折も折、北方領土に関する政府の公式見解は、2019年の「北方領土の日」を迎えたいま、微妙に揺れ動いている。

 1月30日の衆院本会議で、立憲民主党の枝野幸男代表が「北方領土は『日本固有の領土』か」と問いかけると、首相は「我が国が主権を有する」と繰り返すだけだった。翌31日に「社会保障を立て直す国民会議」の野田佳彦代表が「ロシアによる不法占拠との立場に変わりはないか。昨日はぼそぼそ言って聞こえなかった」と追及した時も、答弁内容は同じだった。

 この間のやりとりについては、毎日新聞が
安倍首相 北方四島、「固有の領土」避ける 露の態度硬化を懸念 代表質問答弁
 という見出しで2月2日付で記事化している。

 状況は、参議院に舞台を移しても変わっていない。

 というよりも、「北方領土の日」を控えて、政府の立場はさらに後退しているかに見える。

 6日参院予算委員会において、国民民主党の大塚耕平代表代行が、北方領土についての政府の見解を質すなかで、
「『固有の領土』という言葉を使ってご答弁いただけませんでしょうか?」

 という言い方で首相に質問をぶつけている。

 これに対して首相は、
「えー、その、政府の立場としてはですね、えー、ま、北方領土についてはですね……北方の島々には……わが国の主権……北方領土の島々は、わが国が主権を有する島々である、という立場でございます」

 と、言を左右にしつつ「固有の領土」というフレーズを口に出すことを避けた。

 答弁を受けて、大塚氏は
「あの、固有の領土という言葉は使えなくなったのでしょうか?」
と問い詰めたのだが、首相は
「これはですね。あの、これはもう、この国会では、こういう、この答弁を、させて、一貫させていただいていますが、あー、北方領土はですね、わが国が主権を有する島々である、ま、この立場、この立場には変わりがないということを、申し上げているところでございます」

 とさらにシドロモドロな答弁で応接している。

 首相が北方領土に関して「日本固有の領土」というこれまでの政府見解通りの言い方で言及することを避けている理由は、日経新聞の記事が書いている通り、日露平和条約の締結を前にロシア側を刺激することを避けたい思惑があるからなのだろう。そして、そのまた背景には、2009年に麻生太郎首相(当時)が「不法占拠」という言葉を使って、ロシアとの関係が悪化した時の記憶があずかっていたりもするはずだ。