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 ちょっと前のニュースなのだが、この1月の中旬、東京都港区の防潮扉でバンクシーの作品と見られる落書きが発見された時の話題を蒸し返したい。

 発端は、小池百合子東京都知事がツイッター上に投稿した書き込みだった。

 小池氏は
《あのバンクシーの作品かもしれないカワイイねずみの絵が都内にありました! 東京への贈り物かも? カバンを持っているようです。》

 と、ネズミに寄り添ったポーズの自身の写真つきでツイートしている。
 ちなみに写真の中で知事が羽織っているアウターは、オリンピックのエンブレムを意識した柄のコートだったりする。

 「なるほど」

 私は、タイムラインに流れてきたそのツイートを見て、そのあからさまな宣伝臭に当惑した。

 以来、「ポピュリズム」という言葉がアタマから離れない。

 なので、今回は、ポピュリズム全般について、この一年ほどの間にあれこれ考えていることを吐き出してみるつもりでいる。

 小池都知事に狙いをつけて何かを言いたいわけではない。

 ただ、話のとっかかりとしてあまりにもわかりやすい絵柄を提供してくれたので、知事閣下の話題でスタートさせていただいた次第だ。他意はない。悪意は多少ある。悪意については、やや申し訳なく思っている。

 話題の口火を切ったのは知事のツイッター発信だった。

 その知事のツイートに東京都が反応し、その反応を新聞が報じるカタチで事態が進行した。

 見事な連携だ。

 実際の順序はどうだったのだろう。

1.東京都所有の防潮扉にバンクシー作と思われるネズミが描かれていたことが発見される。
2.上記の発見が都の担当者の知るところとなる。
3.現地で作品と都知事のツーショットを撮影した上で、知事がツイートする。
4.「都が本物かどうか調査する考えを明らかにする旨を発表した」という新聞記事が配信される。

 という感じだろうか。

 細かい経緯はともかく、知事によるツイッター発信と、メディアによる報道と、都による調査の開始が一体化して進められている感じが濃厚に漂っている。

 こういったあたりの進行具合がどうにも芝居がかっている。

 民放の深夜帯ドラマのスタッフが仕掛けるスポーツ新聞向けの番宣のようでもある。

 当然のことだが、このわざとらしい絵柄の写真を伴ったあざといツイートは、一部の都民の反発を招いた。

 というのも、作者がバンクシーであれ、そこいらへんの美大生のいたずらだったのであれ、落書きは落書きだからだ。とすれば、防潮扉の管理および所有者であり現地を管轄する行政機関でもある東京都としては、当然、迷惑行為を取り締まる者の立場で行動せねばならない。建前上はそうなる。