2022年8月16日に米国のバイデン大統領が署名したことで、歳出・歳入法(インフレ抑制法)が成立した。この法律が自動車関係者の間で注目されたのは、米国市場における今後のEV(電気自動車)の普及に大きく影響を与えるとみられているからだ。

日産自動車が米国で生産する「リーフ」は、日本車で唯一、インフレ抑制法で税額控除の対象になるとみられる
日産自動車が米国で生産する「リーフ」は、日本車で唯一、インフレ抑制法で税額控除の対象になるとみられる
(写真:日産自動車)
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 現在、米国ではEVとPHEV(プラグインハイブリッド車)に対して、バッテリー容量に応じて2500~7500ドル(1ドル=135円換算で33万7500~101万2500円)の税額控除が実施されている。インフレ抑制法ではこの適用対象が見直され、以下のような制度に衣替えされる。

 まず対象となる車両の価格は、セダンやハッチバック車などのいわゆる乗用車が5万5000ドル以下、トラックやSUV(多目的スポーツ車)で8万ドル以下である必要がある。また購入者の所得は、連邦税の共同申告者は30万ドル、世帯主は22万5000ドル、個人申告者は15万ドル以下である必要がある。これまでは対象車両の価格や、購入者の所得に制限はなかった。

 税額控除の対象となるEVやPHEVは北米で組み立てられた車両で、2022年12月31日以降に製造された車両に適用される。税額控除の額は7500ドルだが、車両に搭載されるバッテリーに、北米あるいは米国と自由貿易協定を結んでいる国のいずれかで調達されたリチウムなどの重要鉱物を40%(2023年、コストベース)以上含んでいれば7500ドルの半額の3750ドルの控除が受けられる。重要鉱物の比率は毎年10ポイントずつ増加し、2027年には80%になる。中国やロシアなど、国務省が「特に懸念される国」と指定した国からの重要鉱物は2025年以降、使用が禁止される。残りの3750ドルの税額控除は、バッテリー用部品のうち、50%以上が北米で製造されている場合に適用され、2029年以降には100%になるよう定められている。

 つまりこの法律は、平たくいうと、米国製のバッテリーを積んだ米国製のEVだけに適用され、近い将来には中国製の材料を使ったバッテリーも搭載できなくなる。はっきりと名指しはされていないが、世界のEV用バッテリーのシェアで半分以上を占める中国のバッテリーメーカーを排除する狙いがあることは明確だ。