高い完成度

 それから16年が経過し、BYDのクルマづくりは飛躍的な進化を遂げた。BYDの特徴の1つに、主要な部品をすべて内製していることがある。BYDはもともとバッテリーメーカーとしてスタートした。従って、当然のことながら同社のEVには内製バッテリーを搭載しているが、それだけではなく、モーターやインバーター、ECU(電子制御ユニット)なども内製しているという。このため、コストや品質管理の面で有利なだけでなく、現在のように新型コロナウイルスの感染拡大でサプライチェーンが乱れているときにも生産をコントロールしやすいというメリットがある。

 BYDが日本での発売を予定しているのは、中型SUV(多目的スポーツ車)の「ATTO 3」と、小型ハッチバック車の「DOLPHIN」、中型セダンの「SEAL」の3車種である。まず2023年1月にATTO 3の発売を予定しており、次いで2023年中ごろにDOLPHIN、2023年下半期にSEALを発売する計画だ。これらの車種にはBYDの最新のEV専用プラットフォーム「eプラットフォーム3.0」を採用している。このプラットフォームには「ブレードバッテリー」と呼ぶ新開発のバッテリーを採用しているほか、主要な部品をモジュール化し、幅広い車種に柔軟に適用できるように設計されているのが特徴だ。

eプラットフォーム3.0(左)とブレードバッテリー(右)。限られたスペースに多くのバッテリーを搭載できるのが特徴だ
[画像のクリックで拡大表示]
eプラットフォーム3.0(左)とブレードバッテリー(右)。限られたスペースに多くのバッテリーを搭載できるのが特徴だ
[画像のクリックで拡大表示]
eプラットフォーム3.0(左)とブレードバッテリー(右)。限られたスペースに多くのバッテリーを搭載できるのが特徴だ
(写真:BYD)

 ブレードバッテリーの特徴は、限られた容積の中に多くのバッテリーを搭載できることだ。トヨタ自動車はBYDとEVの開発で提携しているが、トヨタとBYDの共同開発車両はこのeプラットフォーム3.0を使うという噂もある。通常のEVではバッテリーをいくつかまとめて1つの容器に入れて「モジュール」とし、このモジュールをバッテリーパック内に収める。これに対してブレードバッテリーはモジュールがなく、細長い直方体のバッテリーを直接バッテリーパック内に収めるため、容積効率が向上するわけだ。

静かで軽快な走り

 ごく短時間だが、ATTO 3を試乗することができたので、そのインプレッションを紹介しよう。ATTO 3の車体サイズは全長4455×全幅1875×全高1615mm、ホイールベースは2720mmで、トヨタ自動車のbZ4X(全長4690×全幅1860×全高1650 mm)より一回り小さい。一方で前輪を駆動するモーター出力は150kWとbZ4Xと同じだ。国内に導入されるATTO 3の電池容量は58.56kWhとなる予定で、これはbZ4Xの71.4kWhよりも少なく、WLTCモードの航続距離(自社による実測値)も485kmと、bZ4Xの559km(前輪駆動仕様)よりも短い。

 このように、ATTO 3は車体サイズ、航続距離の両面でbZ4Xよりも少しずつ小さく短いという位置づけになるが、注目されるのはその価格だ。一足先に販売を始めているオーストラリアでは、同等の容量のバッテリーを積む仕様が4万7381オーストラリアドル(1オーストラリアドル=93円換算で440万6433円)で販売されており、これはbZ4Xの価格(前輪駆動仕様で600万円)よりも大幅に低い。日産自動車「アリア」のベース車種の価格(539万円)よりも大幅に低く、日本でこれに近い価格で販売されれば、高い競争力を発揮するだろう。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1357文字 / 全文3342文字

【初割・2カ月無料】有料会員の全サービス使い放題…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、11年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「クルマのうんテク」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。