2022年、最も注目していたモデルが発売された。軽自動車EV(電気自動車)の日産自動車「サクラ」である。なぜ注目していたかといえば、このクルマが日本のEV市場を切り開くのではないかと期待していたからだ。果たしてその予感通り、サクラの受注台数は6月26日時点で1万7000台を超えたという。これは、EVという枠を取り外しても新型車として好調な出足といえる。

日産自動車の新型軽自動車EV「サクラ」。日産の本社がある横浜市のみなとみらい地区周辺で試乗した
日産自動車の新型軽自動車EV「サクラ」。日産の本社がある横浜市のみなとみらい地区周辺で試乗した
(写真:筆者が撮影)
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 筆者は以前から、軽自動車とEVという組み合わせは相性が良いと感じていた。軽自動車の需要は地方が多いが、いま地方ではガソリンスタンドの数が急速に減っている。全国でピーク時に約6万軒あったガソリンスタンドは、現在約半分の3万軒になった。減少ペースは足元でも衰えておらず、筆者は2030年ごろまでには2万軒にまで減るのではないかと予想している。

 都市部ではガソリンスタンドがなくなっても別のスタンドに行けばいいが、地方ではその地域に1カ所だけ、というところが少なくない。現在でも給油のためだけに往復40分もかけて移動するという地域があるが、そうしたケースはますます増えていくだろう。そこに行くとEVは自宅で充電できるから、わざわざ給油のために時間をかけて出かける必要がない。しかも、地方では一戸建ての住宅が一般的だから、駐車スペースの近くに充電設備を備えるのも簡単だ。加えて、地方ではクルマの複数所有が普通だから、近距離はEV、長距離はエンジン車、と使い分けられるのもメリットである。

 このように地方は、都市部に比べてEVにとって普及の条件がそろっているが、これまでそれを阻んできたのがEVの価格だ。しかしサクラは国の補助金込みで約178万円からという、通常の軽自動車の上級車種とそれほど変わらない価格を実現した。最後の壁が取り払われ、1万7000台という受注に結びついたのだろう。今回の試乗会では日産の担当者の手元に詳細なデータがなかったが、西日本からの受注が多いということだった。ということはやはり、都市部ではなく、地方からの受注が多かったということがいえると思う。

サクラの後席足元スペース。ベースとなった「デイズ」とまったく変わらない広いスペースを確保している。これは後端までシートスライドした場合だが、前端までスライドさせても大人2人が無理なく座れるスペースは確保されている
サクラの後席足元スペース。ベースとなった「デイズ」とまったく変わらない広いスペースを確保している。これは後端までシートスライドした場合だが、前端までスライドさせても大人2人が無理なく座れるスペースは確保されている
(写真:筆者が撮影)
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