これまでの軽の不満を一挙に解消

 このように、軽自動車とEVという組み合わせは使用環境という観点で非常に相性がいい。しかし筆者が考える相性の良さはそれだけではない。EV化することでこれまで軽自動車に感じていた不満が一挙に解消されるのも、EV+軽自動車という組み合わせの大きな利点だ。

 まずメリットを感じるのが動力性能の向上である。軽自動車に乗ってよく不満に感じるのは加速性能の不足である。特に、自然吸気エンジンの仕様を選ぶと、都市内での移動はともかく、高速道路に進入する際には、かなりエンジン回転数を上げないと交通の流れに乗れず、騒音の高まりや加速のもどかしさはかなりストレスになる。

 これがEVになると低速トルクが大きいため、軽くアクセルを踏み込むだけで、容易に高速道路の流れに乗ることができる。モーターの出力が47kWと限られているため、巡航速度からの加速性能には懸念があったが、今回の試乗では、軽自動車の常用域と考えられる100km/h程度までの速度領域で、加速性能に不満を覚えるシーンはなかった。

サクラは通常の軽自動車に比べて静粛性を大幅に向上させた。特に、発進加速時の静かさは圧倒的だ
サクラは通常の軽自動車に比べて静粛性を大幅に向上させた。特に、発進加速時の静かさは圧倒的だ
(出所:日産自動車)
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 第2に、軽自動車とEVの組み合わせのメリットは走りの質感が大幅に向上することである。現在の軽自動車はかなり遮音性能が向上し、日常走行で「うるさい」という不満を持つことはほとんどない。しかし、軽自動車のエンジン音はかなり安っぽい場合が多い。ターボ車であれば、この点が改善されるものの、完全に解消するわけではない。こうした不満がサクラではきれいに払拭されていた。エンジン騒音がしないのは当然として、ベースとなった「デイズ」に比べて重量が200kgほど増えるので、乗り心地が重厚になり、リッターカークラスを超えるレベルになる。

 これは数字でも裏付けられている。日産によれば、突起を乗り越えたときの車体に伝わる衝撃値は、BセグメントやCセグメント車を超えて、Dセグメントの高級車並みだという。しかも床下のバッテリーのせいで重心高が低いので、ばねを固めなくてもロールを抑えた落ち着いたコーナリングを実現している。もちろん、サクラで乗り心地が向上しているのはバッテリーを搭載しているせいばかりではない。リアサスペンションはデイズのトーションビーム式から、3リンク式に変更された。これは、トーションビーム式だとトーションビームとバッテリーが干渉してしまうためなのだが、このことが乗り心地にも好影響を与えた。

 トーションビーム式は、トレーリングアームと車体との取り付け点で横剛性を確保しなければならないため、ブシュをあまり柔らかくできない。これに対して3リンク式では、横方向の剛性を車軸と平行に配置したリンク(ラテラルリンク)で確保しているため、トレーリングアームの車体への取り付け点のブシュを柔らかくできる。このため乗り心地が向上したのだ。さらに、バッテリーケースと車体を強固に結合しているので、車体剛性はねじり剛性で1.5倍程度になっているという。サクラを試乗した数日あとに、他社のBセグメントSUV(多目的スポーツ車)に乗ったのだが、2クラス上級のハイブリッド車であるにもかかわらず、騒音の大きさや、衝撃を乗り越えたときのボディーがガタガタと振動する感触が、サクラよりはるかに劣っていて驚いた。

段差乗り越え時のショックはデイズの半分以下で、3クラス上級のDセグメント車をしのぐレベルだという。乗り心地の向上には3リンク式リアサスペンションの採用も貢献している
段差乗り越え時のショックはデイズの半分以下で、3クラス上級のDセグメント車をしのぐレベルだという。乗り心地の向上には3リンク式リアサスペンションの採用も貢献している
(出所:日産自動車)
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