排ガスのクリーン化にも有利

 また排気量を増やしたことは排ガスのクリーン化にも有利に働いた。NOxは燃焼温度が上昇すると発生量が増加するため、同じトルクを発生するときの燃焼温度が2.2Lエンジンよりも下げられる3.3Lエンジンはもともと有利だ。また、燃焼温度が上昇する高負荷領域でも、2.2LエンジンよりもEGR(排ガス再循環)の量を多くできるので、2.2Lエンジンよりも高いトルク域まで排ガスのクリーン度を維持できる。

 このように新型エンジンは、吸入空気量が多いことを燃費や排ガスのクリーン性能向上に振り向けている。新型3.3Lエンジンの最高出力や最大トルクは、それぞれ187kW、550N・m(いずれも48Vシステムと組み合わせた場合)と、2.2Lエンジンの147kW、450N・mからそれぞれ約27%、22%向上しているが、排気量が1.5倍になっていることを考えるとやや物足りないのはそのためだ。

大排気量化により増加する吸入空気量をトルクや出力の向上だけでなく、排ガスのクリーン化や燃費向上にも振り向けた
大排気量化により増加する吸入空気量をトルクや出力の向上だけでなく、排ガスのクリーン化や燃費向上にも振り向けた
(出所:マツダ)
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 もちろん新型エンジンの特徴は、排気量を増やしたことだけではない。新型ディーゼルエンジンはDCPCI(Distribution Controlled - Partially Premixed Compression Ignition、空間制御予混合燃焼)と呼ぶ新しい燃焼コンセプトを取り入れて、燃費の向上と排ガスのクリーン化を図っている。従来のディーゼルエンジンの課題は、燃焼室内に噴射した燃料が十分に空気と混合しないうちに着火してしまうことだった。そうなると燃料が完全に燃焼せずにすすが発生してしまう。

 燃料が空気と十分混合しないうちに燃えてしまう原因は、先に噴いた燃料が燃えているところに、次の燃料を噴いてしまうことにある。これを避けようと、従来は先に噴いた燃料の燃焼が収まったところで次の燃料を噴いていたのだが、そうなると、ピストンが下がり始めてから燃料を噴くことになり、熱エネルギーが効率良く運動エネルギーに変換されない。

従来(黒線)は上死点(TDC)をかなり過ぎてから燃焼のピークを迎えていたため、熱エネルギーが有効に運動エネルギーに変換されなかった。新たな燃焼方式では排ガスのクリーン性能を維持しながら燃焼のピークをより早くすることで、熱エネルギーが有効に運動エネルギーに変換されるようになった
従来(黒線)は上死点(TDC)をかなり過ぎてから燃焼のピークを迎えていたため、熱エネルギーが有効に運動エネルギーに変換されなかった。新たな燃焼方式では排ガスのクリーン性能を維持しながら燃焼のピークをより早くすることで、熱エネルギーが有効に運動エネルギーに変換されるようになった
(出所:マツダ)
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 そこで新しい燃焼コンセプトでは、段差の付いた「2段Egg燃焼室ピストン」と呼ぶピストン形状を採用し、先に噴いた燃料は、2つのくぼみで燃えるようにした。そして次に噴いた燃料を2つのくぼみの間で燃えるようにして先に噴いた燃料との干渉を防ぐようにした。これによって、噴射した燃料に早く火が付き過ぎるのを防ぎながら短時間に燃焼させることが可能になり、熱エネルギーが運動エネルギーに有効に変換されるようになって燃費が向上した。加えてすすの発生も減らしている。

2段Egg燃焼室ピストンと呼ぶ燃焼室形状を採用することで、最初に噴射した燃料と、次に噴射した燃料が燃焼する空間を分けた。これにより、噴射の間隔を短くしても、2回めの噴射から着火までの時間を稼ぐことができるようになり、短時間で燃焼を終了できるようになった
2段Egg燃焼室ピストンと呼ぶ燃焼室形状を採用することで、最初に噴射した燃料と、次に噴射した燃料が燃焼する空間を分けた。これにより、噴射の間隔を短くしても、2回めの噴射から着火までの時間を稼ぐことができるようになり、短時間で燃焼を終了できるようになった
(出所:マツダ)
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 新型3.3Lディーゼルエンジンは、今回紹介した48Vシステムと組み合わせたマイルドハイブリッド仕様のほかに、48Vシステムなしの、より低コストな仕様も用意される。ウェブ上では既にCX-60の価格情報が出回っており、これを見ると48Vなしの仕様は車両価格が大幅に低く設定されていることから、国内市場ではこちらが売れ筋になりそうだ。その走行性能や燃費性能を、早く一般公道で試してみたいと思う。

[日経クロステック 2022年4月26日掲載]情報は掲載時点のものです。

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