なぜ大排気量なのに燃費がいいのか

 ではなぜ3.3Lの新型ディーゼルエンジンは、排気量を大きくしているにもかかわらず燃費が向上するのか。それは、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンでは燃焼の方式が異なるからである。現在のガソリンエンジンのほとんどは、三元触媒を有効に働かせるために理論空燃比14.7(燃料1:空気14.7)で燃焼させている。またガソリンエンジンで希薄燃焼しようとしても、火花点火のため、あまり希薄な混合気は火が付かず、燃え広がる速度も遅くなってしまうために限界がある。

 これに対してディーゼルエンジンは吸気の量は一定で、燃料の量でエンジンの出力を制御する。しかも火花点火ではなく、ピストンの上昇で燃焼室が高温になるのを利用して着火する圧縮着火方式であるためガソリンエンジンのような希薄燃焼の制限がなく、空燃比30~60という希薄な混合気を燃焼させることが可能だ。これがディーゼルエンジンの燃費がガソリンエンジンよりも優れる秘密である。

 では希薄な混合気を燃焼させるとなぜ燃費が向上するのか。これには2つの理由がある。1つは、同じ量の燃料を燃やす場合、空気がたくさんあったほうが、より大きな仕事ができるからだ。これは、気化した燃料や、燃焼してできる二酸化炭素(CO2)や水(H2O)よりも、空気のほうが同じ熱量が加わった場合の膨らもうとする力が大きいからである。難しい言葉でいえば、空気のほうが気化した燃料やCO2、H2Oよりも比熱比が大きい(同じ熱量なら大きく膨張する)から、ということになる。

 もう1つの理由は、同じ量の燃料にたくさんの空気を混ぜて燃焼させると燃焼温度が下がり、シリンダーや燃焼室の内壁から逃げる熱量も減ることだ。つまり冷却損失が下がる。この「同じ燃料の量でより大きな仕事ができる」「冷却損失が減る」という2つの理由で、新型ディーゼルエンジンでは排気量を増やすことで、むしろ燃費を向上させることができた。

 では、無限に排気量を大きくすると無限に燃費も良くなるかというと、当然ながらそうではない。というのは、排気量が大きくなれば、ピストンが大きくなり、コンロッドは長く、クランクシャフトは大きくなるからだ。つまりエンジンを構成する運動部品が大きく、重くなり、その摩擦損失がどんどん大きくなるため、燃費の悪化要因となる。今回、新型エンジンの排気量を3.3Lにしたのは、摩擦損失を増やさず効率を向上できるのがこの程度の排気量だったからだという。

 排気量を増やしているのになぜ機械損失が増えないのか。それは、4気筒エンジンの場合、騒音・振動の低減のためにバランスシャフトを必要とし、その摩擦損失があるからだ。これに対し直列6気筒エンジンは回転バランスが良いためバランスシャフトをなくせる。実際、試乗したときにも新型6気筒ディーゼルエンジンが高回転までストレスなく吹け上がるのを実感できた。

 こうした基本的な特性に加えて、新型ディーゼルエンジンは48Vのマイルドハイブリッド(簡易ハイブリッド)システムと組み合わせ、大排気量エンジンで効率の悪いごく低速域では小型モーターでアシストするようにして、回転数全域で高い効率を保つようにしている。これにより、低出力のモーター、低容量のバッテリーとの組み合わせで、全域での高い効率を達成しているわけだ。

新開発の3.3Lディーゼルは、小排気量エンジンよりも燃費率の悪いごく低負荷の領域だけをモーターでアシストすることで、全域で高い燃費率を実現できる
新開発の3.3Lディーゼルは、小排気量エンジンよりも燃費率の悪いごく低負荷の領域だけをモーターでアシストすることで、全域で高い燃費率を実現できる
(出所:マツダ)
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