1974年の初代登場以来、Cセグメントのハッチバック車の代表的な車種として世界の自動車市場に君臨してきたドイツ・フォルクスワーゲン(VW)の「ゴルフ」が、8代目に世代交代した。もっとも、世界の自動車市場の重心がセダンやハッチバックといった従来の代表的な車種からSUV(多目的スポーツ車)に移り、またクルマの駆動源がエンジンからモーターに移り変わりつつある現在、ゴルフが世代交代する“重み”が従来よりも軽く感じられるのは否めない。

8代目となった新型「ゴルフ」。ちょっと「ギョロ目」のヘッドランプが外観上の特徴(写真:筆者撮影)
8代目となった新型「ゴルフ」。ちょっと「ギョロ目」のヘッドランプが外観上の特徴(写真:筆者撮影)

 実際、最近のVWはEV(電気自動車)の車種拡大に開発費用や生産費用を割かねばならない事情を反映してか、新型ゴルフのプラットフォームは先代の7代目ゴルフから使っているモジュラープラットフォーム「MQB」を踏襲している。車体の大きさは、7代目の全長4265×全幅1800×全高1460mm、ホイールベース2635mmに対し、全長が4295mmと30mm長くなり、全高が1475mmと15mm高くなった。一方で全幅は1790mmと10mm狭くなり、ホイールベースも2620mmと15mm短い。全面改良のたびに車体が大きくなってきた歴史から考えると、寸法が小さくなっているところがあるのはちょっとした驚きだ。

 欧州車がこのところ野放図に全幅を拡大させ、日本国内の道路事情では扱いにくい寸法の車種も出てきていることを考えると、全幅を縮小することには賛成だし、ホイールベースの短縮も小回り性を改善させるという点で歓迎だ。ホイールベース短縮の効果か最小回転半径も5.2mから5.1mに縮小されている(ベーシックグレード同士の比較)。またホイールベース短縮は後席の居住性への悪影響が心配されるが、実際にはほとんど影響を与えていない。

今でも「メートル原器」か?

 歴代ゴルフの中で、筆者が最も印象に残っているのが、日本国内では2004年に発売された5代目ゴルフだ。このモデルは、車体を構成するパネル同士を接合するのにレーザー溶接を大幅に取り入れたのが特徴で、その結果として当時の国産同クラス車とは比較にならないほどの高いボディー剛性を実現していた。試乗会の会場は箱根のホテルだったのだが、ホテルの前の荒れた路面からの衝撃を、金庫のように強固なボディーが受け止める感触には本当に驚かされた。衝撃を受けたのは他の完成車メーカーも同様だったようで、その後、内外の同クラスのクルマのボディー剛性におけるスタンダードは、一気に上がったように思う。ことほどさように、ゴルフは世界の完成車メーカーにとって開発の「メートル原器」であり、ゴルフの性能向上は世界のCセグメント車の水準を引き上げるのに貢献してきたと思う。

 では新型ゴルフも果たしてメートル原器としての地位は揺らいでいないのか。技術的に最大の見どころは、すべてのモデルにマイルド・ハイブリッド・システムの「48Vシステム」が搭載されたことだろう。新型ゴルフのベーシックモデルには、従来の排気量1.2L・直列4気筒の直噴ガソリンターボエンジンに代わり、1.0L・直列3気筒の直噴ガソリンターボエンジン「1.0 eTSI」が搭載されている。この3気筒・1.0Lエンジン自体は既に、VWグループのプレミアムブランドである独アウディの「A1」や「Q2」にも搭載されているが、目新しいのは、これに48Vシステムを組み合わせたことだ。VWグループでは既に48Vシステムを上級車種には展開しているが、その波が普及車種にも及んできた格好である。なお新型ゴルフには1.0Lエンジン搭載車のほかに直列4気筒・1.5L直噴ガソリンターボエンジン搭載車があるが、こちらのエンジンにも48Vシステムが組み合わされている。

 新型ゴルフが搭載するマイルド・ハイブリッド・システムは、国産のハイブリッド車に比べて小型のモーターと小容量のバッテリーを組み合わせるのが特徴だ。またシステムの構造もシンプルで、アイドリングストップ状態からエンジンを再始動するスターターと、走行中に発電してバッテリーに電力を供給するジェネレーター(発電機)の機能を兼ね備えたBSG(ベルト・スターター・ジェネレーター)と呼ぶ装置を、従来のジェネレーターの代わりに搭載するだけである。

48Vシステムは、BSGと呼ぶ装置を従来のジェネレーターの代わりに搭載するだけのシンプルなシステムだ。写真は、同じエンジンを積むアウディA3のもの(写真:アウディ)
48Vシステムは、BSGと呼ぶ装置を従来のジェネレーターの代わりに搭載するだけのシンプルなシステムだ。写真は、同じエンジンを積むアウディA3のもの(写真:アウディ)

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