トヨタらしい慎重さ

 これらの疑問に筆者なりに答える前に、今回トヨタが商品化したAdvanced Driveとはどういうシステムなのかについてざっと説明しておこう。日産が「プロパイロット1.0」で実用化に先べんをつけた先進運転支援システムは、少し前まで、高速道路の単一車線を、ステアリング、ブレーキ、アクセルの操作なしに(ただしステアリングには手を添えている必要がある)走行できる機能を備え、オプション価格も10万円程度で、各社ともほぼ横並びだった。

 これを崩したのが、日産が2019年7月に「スカイライン」に搭載して実用化した「プロパイロット2.0」である(このコラムの「新型スカイラインにみるプロパイロット2.0の本当の価値」参照)。プロパイロット2.0は国内では初めて高速道路・単一車線での「手放し運転」を可能にしたのが特徴だ。プロパイロット1.0よりも搭載センサーを増やし、システムを2重化、部分的には3重化して信頼性を向上させることで実現した。

 次に実用化されたのがスバルの「アイサイトX」である(このコラムの「スバルのアイサイトXの頭脳『FPGA』とは」参照)。アイサイトXは、手放し運転可能な運転領域を高速道路での渋滞中に限る代わりに、プロパイロット2.0よりもシステムを低コスト化し、購入しやすい価格を実現している。

 そして21年3月にホンダが実用化したのが世界で初めて自動運転「レベル3」を実現した「Honda Sensing Elite」である。同システムは、ミリ波レーダーやカメラに加えて、LiDARを5台搭載し、また制御ECU(電子制御ユニット)を2重化することなどで信頼性を向上させ、高速道路での渋滞中はクルマが運転の主体になり、カーナビゲーション・システムやスマートフォンの画面をドライバーが見ることができるようになった。

 これらのシステムと今回トヨタが実用化したAdvanced Driveを比較すると、最も機能的に近いのは日産のプロパイロット2.0だ。どちらも自動運転「レベル2」にとどまるものの、高速道路の単一車線での「手放し運転」を可能にしている点が共通する。さらに、走行中に前方に遅い車両がいると、クルマが「車線変更しますか?」と提案して、もしドライバーが確認のスイッチを押したりウインカーを操作したりすると、クルマがステアリングを切って車線変更する(ドライバーは、手放し運転中でもステアリングに手を添える必要がある)のも、プロパイロットと同じだ。

 ただ、プロパイロットにない機能もいくつか備えている。1つは分岐への対応だ。Advanced Driveは基本的には高速道路の本線で動作するシステムだが、プロパイロット2.0が高速の出口までの動作にとどまるのに対し、Advanced Driveは目的地方面への分岐の手前でウインカーを自動的に点滅させ、ステアリング操作を支援する(この際にはステアリングに手を添える必要がある)機能を備える。

目的地方面への分岐を支援する機能を備える(資料:トヨタ自動車)
目的地方面への分岐を支援する機能を備える(資料:トヨタ自動車)
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 また、高速道路の本線を走行中に、本線に合流してくる車両がある場合は、早めに減速して車間距離を確保する。さらにトラックなど大型車両の隣を走行する場合には、横方向の間隔を空けるなど、ドライバーや同乗者が不安を感じにくくなるように配慮している。つまり、基本的な機能はプロパイロット2.0と同じなのだが、細かい部分で、よりドライバーや同乗者が安心できるような配慮が盛り込まれている。

大型車両の隣を走行する場合には、横方向の間隔を空ける(資料:トヨタ自動車)
大型車両の隣を走行する場合には、横方向の間隔を空ける(資料:トヨタ自動車)
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