米アップルはスマートフォンメーカーか? やぶから棒のようだけれど、こう聞かれたら読者諸兄はどう答えるだろうか。当然じゃないか、と答える読者も多いと思うのだけれど、よく知られているように、アップルは工場を持たない、いわゆる「ファブレス企業」である(筆者自身は工場を持たないことをやゆするニュアンスが含まれているように感じられて、あまり好きな言葉ではないのだが)。工場を持たない、すなわちメーク(Make)する現場を持たない企業は、メーカーと呼べるのだろうか。

米アップルが提供する地図アプリ「Maps」は周囲の景観を表示できる「Look Around」と呼ぶ機能を備える(写真:アップル)

 どうしてこんなことを言い出したかというと、今年に入って、にわかに「アップルカー」を巡る報道がにぎわい始めたからだ。1月初旬に、アップルがEV(電気自動車)の委託生産先として韓国・現代自動車と交渉を進めているという「報道」が伝わり、現代も「アップルと協業を検討している」というコメントを発表して、報道はにわかにヒートアップした。その後、現代並びに傘下の起亜自動車との協議が最終段階にあると、米CNBCが「報じた」。米ジョージア州にある起亜自動車の工場で組み立てる見込み、と内容も具体的で、現代の株価も上昇した。

 しかし2月初旬になると現代は「アップルと自動運転車の開発について協議を進めていない」と発表し、アップルカーの製造委託先を巡る臆測は振り出しに戻った。しかしその後も、アップルが過去数カ月の間に日産自動車へ接触したという「報道」も出るなど、アップルカーの“製造委託先探し”は相変わらず続いているようだ。

 これほどまでに世界の報道機関がアップルカーの製造委託先について注目するのは、株式の時価総額で世界最大の企業であるアップルがいよいよ自動車産業に進出するという話題性もさることながら、アップルの参入が自動車産業の構造を根底から変える可能性を秘めているからだ。これまでの自動車産業では、開発と製造を同じ企業が手掛けるのが一般的だった。これに対してアップルは、製品開発は自社で手掛けるものの、製造はEMS(Electronics Manufacturing Service)と呼ばれる電子機器の製造請負会社に任せる「開発・製造分離」の企業であり、「アップルカー」でもこのやり方を持ち込もうとしている。このため既存の完成車メーカーから、産業構造の破壊者として警戒されているわけだ。

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