トヨタ自動車が2020年12月に発売した燃料電池車(FCV)の新型「MIRAI」(写真:トヨタ自動車)
トヨタ自動車が2020年12月に発売した燃料電池車(FCV)の新型「MIRAI」(写真:トヨタ自動車)

 皆様、あけましておめでとうございます。2020年は当コラムをご愛読くださり、誠にありがとうございました。2021年もよろしくお願いいたします。

 それにしても、2020年は本当に奇妙な年だった。取材も出張もオンラインになり、離れて暮らす家族と会うにもびくびくしなければならなかった。2021年も、しばらくは新型コロナウイルスとの付き合いは続くと覚悟しなければならないだろう。20年の春ごろには、半年くらいたてば季節性のインフルエンザのように流行は収まるのではないかと楽観していたが、その見方は甘かった。その経験からいえば、ワクチンの接種が徐々に進むとしても、最低でもあと1年くらいは、程度の差こそあれ、感染拡大と行動制限による抑え込みを何度も繰り返すことになると覚悟している。

“移動の価値”が変わった1年

 新型コロナウイルスの感染拡大は、“移動”に対する価値観の転換をもたらしたと思う。多くの読者も感じておられるのではないかと思うが、今まで、打ち合わせや取材のために時間をかけて移動していたのは何だったんだろうと感じることが2020年は何度もあった。筆者は出張で地方に出かけていくことが好きなので、それをおっくうと思ったことはなかったから、それは意外な発見だった。もちろんこれからも、地方に用事ができれば喜んで出かけていくと思うが、同時に「オンラインでやりましょう」と言われても少しもがっかりしないだろうとも思う。

 一方で、2020年は夏と秋に短い休みを取り、GoToトラベルを利用させてもらったのだが、どちらもコロナ禍にもかかわらず(人のことは言えないが)、大層な人出で驚いた。特に秋に出かけたほうは場所柄だったのかもしれないが、高齢の人たちが多いのに驚いた。この2つの出来事から考えたのは、コロナ禍で人の移動が減る、という議論は半分合っているけれど、半分間違っているのではないか、ということだ。つまり、通勤や出張など「やむを得ない移動」はコロナ後も戻ってこない、あるいは戻りにくいかもしれないが、旅行やイベントなどの「楽しみのための移動」は今後も減らないし、むしろ増加傾向になるだろうということだ。

 そう考えれば、コロナ禍でもクルマの売れ行きが鈍っていないのに合点がいく。もちろん、日本でも海外でも、緊急事態宣言やロックダウンの期間中は大きく落ち込んだ。しかし2020年の8月以降は急速に回復している。2020年12月21日付の日経電子版に載った日経ビジネスの記事によれば、トヨタ自動車のグループ販売は2020年4~6月期に前年同期比で3割以上減ったが、8月の販売台数は2019年の9割まで戻り、9月以降はトヨタ車で前年超えとなった。世界2大市場の米国、中国での販売がけん引する形で「10~12月期に前年同期比95%水準」とみていた予想を大幅に上回るペースで回復した。さらに2020年10月のトヨタグループの世界販売台数は過去最高の販売実績となり、「ディーラーに車が足りなくて困っている」(関係者)状況だという。

 コロナ禍でも人々の生活は続くから、物流需要は減らない。むしろ個別配送の増加で宅配業者は大忙しだ。通勤も、他人との接触を避けて公共交通より自家用車を選ぶ人が増え、さらに個人的な移動手段としても自家用車が見直されている。移動需要の減少の影響が大きいのは鉄道やバス、そして航空機といった公共交通であり、コロナはむしろ自動車需要には追い風のようにさえ見える。

日本の電動化目標はそれほど厳しくない

 しかし、だからといって日本の自動車産業が順風満帆というわけでは無論ない。今後、大きなハードルとなりそうなのが電動化だ。菅義偉首相は2020年10月26日に開会した臨時国会の所信表明演説で、国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明した。これを受けて政府は2020年12月25日に、2050年の脱炭素社会の実現に向けた「グリーン成長戦略」を発表した。この戦略には、2030年代半ばまでに国内で販売される新車(軽自動車を含む、商用車を除く)の電動化を義務付ける政策が含まれる。

続きを読む 2/3 後れを取る日本の再生可能エネルギー導入

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