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 ダイハツ工業の「タフト」と聞いて懐かしい思いにとらわれた読者はきっと50代以上に違いない。1974年から1984年まで生産されていた車種の名称だからだ。初代タフトはラダーフレームを備えた車体にサスペンションは4輪ともリーフリジッドという、快適性よりは耐久性・強度を重視した本格オフロード4輪駆動車だった。筆者も当時、トヨタの「ランドクルーザー」や日産の「パトロール」に比べてずいぶん小さな「ジープ」っぽいクルマが出たな、と思った記憶がある。

36年ぶりに復活したダイハツ工業の「タフト」(写真:筆者撮影)

 そのタフトの名前が30年以上の時を経てよみがえったのが今年6月だ。新しいタフトは、販売好調なスズキの軽SUV(多目的スポーツ車)「ハスラー」の競合車種として誕生した。実はタフトより前に、ダイハツはハスラーへの対抗車種として「キャスト アクティバ」を2015年9月に発売している。キャストはレトロなデザインを採用して2009年まで生産されていた「ミラ ジーノ」の流れをくむデザインを採用しており、アクティバのほかに「スタイル」「スポーツ」という全部で3つのシリーズがあった。1つの車種でハスラーだけでなくレトロなデザインのスズキ「ラパン」にも対抗しようという欲張ったモデルだったが、アクティバはハスラーほどの人気を得ることはできず、2020年3月に生産を終えている(スタイルは継続して生産されている)。

 そこで捲土(けんど)重来を期して、新たにSUV専用車として投入されたのが今回のタフトだ。先に紹介した初代タフトは登録車だったので、今度のタフトよりも車体寸法が大きかったような印象があるのだが、実際に比較してみると、初代タフトの車体寸法は全長3320~3485mm、全幅1460mmで、新型タフトの全長3395mm、全幅1475mmとそれほど変わらない。

 また初代タフトの搭載エンジンは排気量が直列4気筒1.0L(その後2.5Lのディーゼルエンジンと、1.6Lガソリンエンジン=トヨタ自動車製が追加され、最終的にディーゼルエンジンの排気量は2.8Lに拡大された)なので、新型タフトの0.66Lよりもちろん大きいのだが、出力を比較すると初代の58PSに対し、新型タフトのターボ仕様は64PS(47kW)と上回る。筆者は当初「ずいぶんクラスの違うクルマに同じ名称を付けたものだな」という印象を抱いたのだが、実際に数字を比べてみると、初代と新型は車体寸法、エンジン出力ともかなり近いことが分かって意外だった。

 そして何よりも、新型タフトが初代タフトの正当な後継車と思ったのは、新型タフトが全車種「スカイフィールトップ」と呼ぶガラスルーフを標準装備していることだ。これは初代タフトがルーフなし、ドアもなしという当時の本格オフロード4輪駆動車に共通の特徴を備えていたことをほうふつとさせるし、そう思って見ていくと、リアドアのセンターピラー部が太く傾斜したデザインになっているのが、初代タフトのロールバーのデザインをモチーフにしていることに気づく。

D-CVTを採用せず

 今回タフトに試乗してみようと思ったのは、もちろん初代タフトを懐かしむ気持ちからだけではない。すでにダイハツの新世代プラットフォーム「DNGA」を採用したクルマは新型「タント」、トヨタ自動車の「ライズ」(ダイハツ「ロッキー」のトヨタへのOEM供給車)の2台に試乗しており、DNGAの実力の高さは体験済みだ。しかし、左側のセンターピラーレス、両側スライドドアという車体剛性を確保しにくい「二重苦」のタントに対して、センターピラーあり、スライドドアなしの車体の軽自動車で改めてDNGAの実力を試してみたかったというのがまず理由の1つ。そして、DNGAの重要な要素技術の1つである「D-CVT」を搭載しないタフトの実力を試してみたかったというのが2つ目。そして、ライバルであるハスラーと比較してみたかったというのが3つ目の理由だ。