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 日産自動車が、BセグメントのSUV(多目的スポーツ車)として従来の初代「ジューク」に代わり、タイから「キックス」を輸入するという話を最初に聞いたとき、筆者はちょっとがっかりした。というのも、筆者は初代ジュークを様々な意味で高く評価していたからだ。

日産自動車の新型SUV「キックス」(上)と初代「ジューク」(下)〔写真:筆者撮影(上)、日産自動車(下)〕

 いま考えても、日産の初代ジュークは画期的なクルマだったと思う。初代ジュークが誕生した2010年には、まだBセグメントのSUVが珍しかったばかりでなく、ジュークのように、クーペのようなスタイリッシュなデザインをSUVに採用すること自体が珍しかった。車幅灯とウインカーを高い位置に置いてヘッドランプのように見せる一方で、本来のヘッドランプは低い位置に置いてフォグランプのように見せるデザインは、「こういうやり方があったんだ」と思わせる新鮮さがあった。仏シトロエンの最近のモデルや、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の現行型「ジープ・チェロキー」(部分改良前)など海外メーカーがこのモチーフを後追いしただけでなく、最近の三菱自動車が採用するフロントデザイン「ダイナミックシールド」も同様のアイデアだ。

 車両の全体を見ても、なだらかに傾斜したリアウインドーや「フェアレディZ」に似た形状のスポーティーなテールランプ、ドアハンドルをリアピラーに埋め込んで2ドアのように見せるドアなど、クーペのようなウエストラインから上の部分の造形と、大径タイヤを四隅に張り出したいかにもSUVという感じのボディーの下半分とを融合させたユニークなデザインで、その後のBセグメントSUVのデザインに大きな影響を与えた。マツダの「CX-3」、仏ルノーの「Captur」、米フォード「Puma」、独アウディの「Q2」など、デザイン重視のBセグSUVの登場が相次いだことに、ジュークの影響がなかったとは思えない。