T-Rocの日本での価格は384万9000円からと、Cセグメントの車種としてはかなり高いのだが、それにはいくつかの理由がある。一つは搭載エンジンが排気量2.0L・直列4気筒の直噴ディーゼルターボエンジンに絞られていることだ。これは、T-Rocの上級車種に当たるティグアンでは8割をディーゼルが占めており、同社のSUVでディーゼル車の人気が高いことが理由だという。また、他の車種では通常オプションになるナビゲーションシステムや、メーターがすべて液晶パネルになっているデジタルメータークラスターを全グレードで標準装備することも価格を押し上げている。装備を完全にそろえて比較するのは難しいのだが、T-Rocと同じディーゼルエンジンを搭載し、ナビゲーションやデジタルメーターを標準装備するゴルフの「TDI Comfortline Meister」の価格が356万9000円だから、T-Rocの“SUV代”はざっと30万円程度と計算できる。

スポーティーな乗り心地

 さて今回もさっそく乗り込んでみよう。実物を外から眺めた印象は、直線的なデザインがVWのSUVらしさを感じさせつつ、その明るいボディーカラーや白いルーフが、これまでのVWのSUVにはない華やかな印象を与える。コロナがなければ、今の季節どこかのリゾート地にでも出かけたい雰囲気だ。室内に乗り込んでもその印象は続く。

 ボディーカラーと同色のパネルがあしらわれたインストルメントパネルは、実用一辺倒ではない「遊び心」を感じさせる。さらに、シートにもブルーのラインが入る念の入れようだ。やや残念だったのは、ベースグレードでも400万円近い価格のクルマなのに、ドアトリムやインストルメントパネルの表皮がソフトパッドではなく、硬い樹脂がむき出しだったこと。ドイツ車では珍しいことである。

 シートそのものは、いかにもVWらしい硬めの感触で、沈み込みも少ないが、しっかり身体を支えてくれるタイプ。ゴルフなどもそうなのだが、今どき珍しいランバーサポートを備えていて、筆者のような腰痛持ちにはうれしい。ただ、これは多くのVW車にいえることなのだが、シートがドイツ人サイズなのか、座面が長すぎて、深く座ろうとすると、シートの前端が膝裏を圧迫する。筆者の脚が短いのが悪いのだが、筆者の身長は日本人男性としては平均的なサイズだと思うので、小柄な男性や女性はちょっと持て余すのではないかと思ってしまう。購入を検討する場合には、販売店で座り心地を確かめたほうがいいだろう。

 VW車では定評のあるボディー剛性は、T-Rocではさらに高められていると感じた。ゴルフやポロ、トゥーランなど最新のVW車はMQBと呼ぶ新世代のプラットフォームを採用している。このプラットフォームは高強度の鋼板を多用し、強固な骨格を備えている。ただ、これまでの車種では車体に強い衝撃が加わった際に、骨格そのものは強固なものの、そこに張られた鋼板が小さく振動する感触があった。この感触はT-Rocでも皆無ではないが、かなり抑えられていて、MQBの改良が進んでいることを感じた。

 先に触れたように、日本で販売されるT-Rocはすべてディーゼルエンジンを搭載する。ディーゼル特有のゴロゴロという騒音は室外はもちろん、アイドリング時には室内にもはっきりと伝わってくる。マツダなど他社のディーゼルエンジンと比べても、ディーゼルらしいエンジンといえるだろう。ただ、走り出してエンジンが暖まってくると、次第に騒音は小さくなり、回転の上昇もスムーズになってくる。アクセルの踏み始めから大きなトルクが立ち上がる感触はディーゼルらしさを感じさせるが、回転上昇がスムーズなぶん、その盛り上がりはディーゼルとしては控えめだ。

 このエンジンは7速のDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)と組み合わせられている。VWのDCTには乾式クラッチを使うタイプと、よりトルク容量の大きいエンジン用の湿式クラッチを使うタイプがあり、従来乾式クラッチを使うタイプは7速、湿式クラッチを使うタイプは6速という違いがあったのだが、少し前から湿式クラッチを使うタイプも7速に進化しており、T-Rocに搭載されているのもこのタイプだ。