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 思いがけず長くなってしまった日産の構造改革計画を勝手に想像するシリーズも今回が最終回。最後に取り上げるテーマは、「日産のスポーツ車種は今後どうなるのか?」についてだ。

 前回のこのコラムでも触れたのだが、日産は今後「C/Dセグメント」「EV(電気自動車)」そして「スポーツ車種」の4つをコアセグメントに定め、リソースを集中する方針を打ち出した。このうちC/Dセグメントについては、現在の日産の主力車種がこのセグメントあることを前回のコラムでは解説した。またEVについても日産は世界初の量産EVである「リーフ」を投入した実績があり、これらをコアセグメントに定めることに異論はないだろう。

 しかし残る「スポーツ車種」については大きな疑問がある。というのも、日産のスポーツ車種の将来を左右する「FR(フロントエンジン・リアドライブ)プラットフォームを今後どうするか」という大きな課題について、明確な展望が今回の構造改革計画では語られなかったからだ。日産の最上級車種である現行型「フーガ/シーマ」は、2009年11月の発売以来、すでに10年あまりが経過している。以前は主力市場の一つだった米国では、すでに販売が打ち切られており、国内でもいつ生産が中止されてもおかしくない状況だ。

 また、このコラムの「新型スカイラインにみるプロパイロット2.0の本当の価値」で取り上げたスカイラインも、2019月7月に部分改良を受け、同コラムで触れたようにまだ十分な性能を備えているとはいえ、発売からすでに6年あまりがたっており、商品力が低下しているのは否めない。フーガもスカイラインも全面改良されないのは、開発投資に見合う販売台数を確保するのが難しいと踏んでいるからだろう。

現行型「フーガ」は2009年11月の発売以来全面改良を受けていない(写真:日産自動車)

 こういう状況を見ると、もはや日産程度の規模の完成車メーカーで、FRプラットフォームを維持するのは難しくなっていると言わざるを得ない。実際、同等規模のホンダにはFRプラットフォームのクルマはないし、トヨタですら、現行モデルになってから7年が経過した「レクサスIS」を全面改良せず、大幅な部分改良でしのいでいる。これまでのように、日産がFR車中心でスポーツモデルのラインアップを維持するには無理が出てきているのだ。

トヨタ自動車ですら、発売から7年が経過した「レクサスIS」を全面改良せず大幅な部分改良にとどめた(写真:トヨタ自動車)

将来のスポーツ車種はツインモーター車

 現在の日産で、スポーツセグメントの代表的な車種といえば先ほど挙げたスカイライン、「フェアレディZ」、そして「GT-R」だ。このうち、今回の構造改革計画でフェアレディZは近く新型車が登場することが明らかにされた。構造改革計画で公開された動画には新型フェアレディZのシルエットも登場するのだが、これを見る限り、新型車のプロポーションは現行型とほとんど変化がなく、プラットフォームは現行の改良版である可能性が高い。

日産が決算発表で公開した動画に登場した新型「フェアレディZ」(動画:日産自動車)

 パワートレーンも、現行型の「スカイライン400R」に搭載されている排気量3.0L・V型6気筒のツインターボエンジンになる公算が大きい。言い方は悪いが、手持ちの技術を組み合わせた、新味の少ない全面改良になりそうだ。そうまでして日産がフェアレディZを延命させたのは、今の日産は“新生ニッサン”の象徴となるようなモデルをどうしても必要としているからだろう。