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 前回はゴールデンウイークで1回お休みをいただいた。その間に、国内では39の都道府県で緊急事態宣言が解除され、また世界でも行動制限や移動制限が少しずつ緩和されつつある。先進国では感染拡大のピークは過ぎ、経済活動を徐々に再開するステージに入ったということなのだろう。しかしまだワクチンや治療薬ができたわけではないし、アフリカや南米などの新興国ではこれから感染拡大が本格化する。行動や移動の制限が世界で完全に解除されるにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 筆者の周囲では、この1カ月くらいで、急にウェブでのミーティングや飲み会の機会が増えた。友人同士の飲み会では、やはりバーチャル環境は物足りなく感じるが、仕事のミーティングは、移動に伴う時間のロスがないのが快適すぎて、もう元には戻れないような気がしている。これがニューノーマル(新しい生活形態)というものなのだろうか。

 さて今回はトヨタ自動車の新型SUV(多目的スポーツ車)「ライズ」を取り上げる。このコラムが始まって以来初めて、2回続けて同じメーカーのクルマを取り上げることになってしまった(ついでにいえば、フェルディナント・ヤマグチ氏の連載コラムとネタが被ってしまったのも初めてだ)のだが、筆者の思いとしてはトヨタ「ライズ」を取り上げたというよりも、ダイハツ工業の新世代技術である「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」を改めて取り上げたかったというのが大きい。というのもライズは、ダイハツ工業が「ロッキー」をトヨタにOEM(相手先ブランドによる生産)供給している車種だからだ。

トヨタ自動車の新型SUV「ライズ」。ダイハツ工業がOEM供給する。

 このコラムの「新型タントでダイハツの次世代技術DNGAの実力を試す」で、DNGAについてはすでに紹介しているのだが、正直にいって、新型タントではその実力を100%発揮していないと感じていた。というのも、その記事でも書いたのだが、どれだけ素性の優れたプラットフォームであっても、スライドドアで、しかも左側のセンターピラーがないという車体剛性の確保に不利な車体では、車体剛性を高めるのは至難の技だし、トルクの細い排気量0.66Lの自然吸気エンジンでは、変速比幅の広い新型CVT(無段変速機)である「D-CVT」の実力を十分に活用できないからだ。

登録車販売で5カ月連続1位

 ダイハツには失礼な言い方になってしまうのだが、このところ、ダイハツの新車にはスズキの後追い企画が多い。少し前だと、スズキのAセグメント背高ワゴンの「ソリオ」に対抗して「トール」(およびその兄弟車種であるトヨタ「タンク/ルーミー」)を商品化したり、大ヒット車種の「ハスラー」に対抗して「キャスト アクティバ」を商品化したり(その後、キャスト アクティバはカタログから落ちた)、最近では改めてハスラーの対抗車種として「TAFT」を商品化する…という具合である。

 ライズ(というかロッキー)もその例に漏れず、スズキのAセグメントSUV(多目的スポーツ車)である「クロスビー」に競合する車種になる(クロスビーについても、このコラムの「「大きいハスラー」の商品企画はここがうまい」ですでに取り上げている)。

 ただし、このAセグメントのSUVという新しいジャンルで、トヨタ・ライズとダイハツ・ロッキーは新参であるにもかかわらず、2020年1月と2月に、ライズは登録車で1位に輝いている。それどころか、事実上同じクルマであるライズとロッキーを合計すると、2019年11月の発売以来、2020年3月まで5カ月連続で登録車1位を獲得しているのである(4月には前回紹介したトヨタ「ヤリス」が1位となった)。

 2020年2月にはホンダの新型「フィット」とトヨタ「ヤリス」という大物が登場しているが、それらをかわして1位を獲得したということは、AセグメントのSUVの潜在的なニーズが非常に高かったことを示している。残念ながら先達のクロスビーの販売台数はライズ+ロッキーの1/8~1/7にとどまっており、トヨタとダイハツとの販売力の差を見せつけられている格好だ。