良好な乗り心地

 CX-30の挙動は、マツダ3に比べると穏やかな印象だ。段差を乗り越えたときなどの衝撃の伝わり方は、明らかにマツダ3よりもマイルドである。このコラムの「XじゃなくてもDで十分と思ったマツダ3」で触れた通り、マツダ3はリアサスペンションにトーションビーム式を採用しており、後輪が同時に段差を乗り越えたときには強めの衝撃を伝えてきた。

 今回のCX-30は、同じサスペンション形式でありながら、そうした状況でも衝撃は小さい。マツダ3の試乗車が4輪駆動仕様だったのに対して今回のCX-30は前輪駆動仕様だったので、ばね下の軽さの影響もあったのかもしれないが、その点を考慮しても快適性という点についていえばマツダ3よりもCX-30のほうが上といえる。この点でもCX-30はマツダ3よりもファミリー向けといえよう。

 ただし、快適性とのトレードオフで、マツダの新世代SKYACTIV技術が目指す「歩くように走る」という点ではマツダ3のほうが上だ。路面状況の分かりやすさ、それを伝えるすばやさという点でいうと、CX-30は快適性が増す分、1枚クッションが挟まったような感じになる。これはどちらがいいということではなく、好みの問題だろう。

 筆者なら、多少快適性が損なわれても、マツダ3のダイレクト感のほうを選びたい。そして、アクセル操作に対してすばやく応答するSKYACTIV-Xの特性は、まさに次世代SKYACTIVの目指す方向にふさわしいと言えるだろう。

街乗りの低速域で燃費メリット

 最後に、気になる燃費について触れよう。今回の試乗では、それほど渋滞しているわけではないが、交差点での発進・停止を頻繁に伴う市街地走行で13~14km/L、高速道路走行で18~19km/Lというところだった。CX-30のSKYACTIV-X仕様車(6速自動変速機仕様・前輪駆動車)のWLTC燃費は市街地モードが13.7Km/L、高速モードが18.3km/Lだから、今回の試乗燃費はこれにほぼ等しかったことになる。

 アクセルに対するすばやいトルクの立ち上がりは、もちろん低速域だけでなく高速域でも得られるのだが、低速のほうが、通常エンジンとの差は感じやすい。それに通常の2.0Lガソリンエンジン仕様のWLTC市街地モード燃費が12.0km/Lであるのに対して高速モード燃費は17.4km/Lだから、SKYACTIV-Xの燃費メリットは低速域のほうが大きいことになる。SKYACTIV-Xは、燃費でも扱いやすさでも、街乗りでその真価を発揮するテクノロジーといえるだろう。

 そして、思いのままに、自分のクルマのようにクルマを操るという新世代SKYACTIV技術をフルに味わうなら、やはりSKYACTIV-X搭載車を選びたい。そこに2.0Lガソリンエンジン仕様車との約70万円の価格差に見合う価値を見いだせるかどうかは、かなり迷う判断になるのだが……。

 先ほど参照したヤマグチ氏の記事によれば、欧州ではCX-30の半分近くをSKYACTIV-X仕様が占めているようだ。その背景には、欧州におけるSKYACTIV-Xと通常の2.0Lガソリンエンジンの価格差が1500ユーロ(1ユーロ=120円換算で18万円)しかなく、1.8Lディーゼルエンジン仕様との差はわずか200ユーロ(同2万4000円)という事情がある(ドイツにおける価格を基に計算)。

 この程度の価格差だったら筆者でも迷うことなくSKYACTIV-X仕様を選ぶだろう。欧州での厳しい燃費規制に適合させるため、マツダには戦略的にSKYACTIV-X仕様の比率を高めようという価格戦略があるのかもしれない。国内でもこの程度の価格差にしてくれたら、現在1割以下と言われるSKYACTIV-Xの比率が一気に高まるだろうと思うと、いささか残念ではあるのだが。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「クルマのうんテク」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。