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意外としっかりした乗り心地

 では走り出してみよう。新型フィットでは「乗り心地の向上」にも力を注いだということだったので、かなり柔らかい乗り心地を想像していたのだが、実際にはそれほど柔らかくはなく、むしろしっかりしている印象を受けた。確かに路面状態のいいところでは乗り心地は滑らかで快適なのだが、段差を乗り越えたときの衝撃はけっこう伝わってくるので、それほど当たりの柔らかいサスペンションという感じはしない。

 パワートレーンは従来のフィットハイブリッドとはかなり異なる印象だ。そもそも従来のi-DCDは乾式の7速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)と小型モーターを組み合わせたエンジン主体のシステムなので、通常走行ではDCT特有の切れ味のよい変速とともに加速するものの、低速域ではやや走行がぎくしゃくする場面もあった。

 これに対して今回のe:HEVは基本的にモーター走行なのでもちろん変速ショックは皆無で、低速からモーターらしい力強いトルクが立ち上がる。エンジン回転数は基本的にはアクセルの踏み込み具合に連動して高まるものの、ときどきアクセルの踏み込みよりも高めの回転数で運転する領域もあり、違和感が皆無ということではないが、エンジン騒音そのものは、このクラスのクルマとしては非常に抑えられているので、一般のドライバーがうるさく感じることはまずないだろう。

 気になる燃費だが、今回の試乗では、都内の混雑した道路で約23km/L、郊外の比較的流れのよい一般道で26km/L、高速道路は同じ区間の往復で約23km/Lという結果だった。都内の一般道でも、少し流れがよくなれば26km/L程度まで高まるので、実用燃費としては25km/Lくらいは期待できそうだ。

 最後に「使い心地」についても触れよう。フィットは既に先代から室内や荷室については十分すぎるほどの広さを確保しているので、新型フィットでも大きく変化しているということはない。目新しいのは運転席と助手席の間に設けられた「フレキシブルアタッチメントテーブル」だ。これはパーキングブレーキを電動化したことで空いたスペースを細長いテーブルにしたもので、バッグなどの手回り品を置くことができるほか、オプションで用意されるティッシュ置き、もの入れ、ゴミ箱、アームレストなどを取り付けることもできる。

 ただ、筆者がより印象深かったのは運転席や助手席周りでソフトパッドの部品が増えていることだ。具体的には全タイプのドアの内張りにソフトパッドを採用したほか、「ベーシック」グレードを除く全タイプのインストルメントパネル、ドアアームレスト、それにニーパッドにもソフトパッドを採用した。インパネやドアの内張りにソフトな素材を使うことはあっても、ニーパッド(センターコンソールの両脇)までソフトな素材を使うことは、このクラスではほとんどない。購入したユーザーは、意外な部分のソフトな感触に、ちょっとしたうれしさを感じるのではないだろうか。

新型フィットのソフトパッドを使用した箇所。運転席と助手席の膝周りにソフト素材を使うのはこのクラスでは珍しい。(写真:ホンダ)

 新型フィットは、ホンダのクルマづくりの変曲点を示すクルマなのかもしれない。既にフィットだけでなく、軽自動車の「N-WGN」や、ホンダ初の量産電気自動車である「Honda e」は、これまでのホンダデザインの象徴だった「ソリッドウイングフェイス(つり上がったヘッドランプを光沢のあるグリルでつないだフロントデザイン)」のアグレッシブな表情から、シンプルで優しい表情に変わっている。内装も、Honda eは初代「シビック」を思わせる水平基調のシンプルなデザインで、フィットの内装デザインと共通するものを感じさせる。

 ただ、こうしたシンプルな優しいデザインはコンパクトクラスのクルマには似合っても、より高級感を求められる上級車種にそのまま展開するのは難しい。ホンダの変化が今後、上級車種にどのように波及していくのか、注意深く見守ってみたい。