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 今回新型フィットに搭載するe:HEVは、インサイトと同様に排気量1.5Lのエンジンを採用しているが、エンジン出力は80kWから72kWに、駆動用モーターの出力も96kWから80kWに、それぞれ小さくなっている。これに伴ってインサイトよりもモーターを薄型化したり、吸気系をコンパクト化することで、幅、奥行きともインサイト用のシステムに比べて20%小型化し、フィットのような小型車に搭載できるようにした。インサイトでは1.1kWhあったバッテリー容量も、新型フィットでは0.9kWh弱に小さくしている。気になるコストは「従来のi-DCDと同等に抑えた」(ホンダ)としており、低コスト化のノウハウが相当蓄積してきたようだ。

インサイトと新型フィットのハイブリッドシステムの寸法比較(上から見たところ)。新型フィット向けのシステムは幅、奥行きともインサイト用より20%小型化した。(写真:ホンダ)

すっきりした視界

 では、新型フィットは狙い通り「心地よいクルマ」に仕上がっているだろうか。ここから先はクルマに乗り込んで検証していこう。ホンダは、新型フィットで追求した心地よさを「視界」「座り心地」「乗り心地」「使い心地」の4つに分類している。まず「心地よい視界」の確保では、フロントピラーを従来の半分以下に細くしたのが特徴だ。フロントピラーは、前面衝突の際に衝撃を受け止める重要な部分の1つなのでそのままでは細くするのが難しい。新型フィットではフロントピラーを2本に分け、後ろ側のピラーで荷重の多くを受けるようにして、前側のピラーは細くし、広い視界を実現した。この細いフロントピラーのおかげで、水平方向の実質的な視野は先代の69度から新型では90度と大幅に広がったという。

先代と新型の前席からの視野の比較。(写真:ホンダ)

 実際に乗り込んでみても、運転席からの眺めの良さはちょっと驚かされるほどだ。もちろん、ホンダが自慢する細いフロントピラーの恩恵もあるのだが、それに加えてすっきりした視界の実現に貢献しているのが真っ平らなインストルメントパネルの上面である。視界そのものは、他車とそれほど大きな差があるわけではないのだが、上面が平らなだけでこんなにすっきりした印象になるというのはちょっと意外だった。この平らで凸凹のないインストルメントパネルの上面は、強い日射の下でもフロントウインドーへの映り込みが気にならないという効果も挙げている。

「面」で荷重を受けるシート

 「座り心地」の向上では、新たに開発したシートを採用した。従来型のフィットは、座面の形状が筆者と相性が悪く、腿の裏がシートに支持されている感じが足りなかった。また腰痛持ちの筆者から見ると腰の支持も不足していた。これに対して新型フィットでは座面、シートバックに樹脂製のマットを組み込むことで、クッションを柔らかくしながらも体を“面”で支える新しい構造をホンダ車としては初めて採用した。

 このため、新型フィットは座り心地が劇的に改善して、しっかりと体が支えられている実感が得られるようになり、試乗中に腰の痛みを覚えることもなかった。あとは、座ったときの座面の沈み込みがもう少しだけあると、よりフィットした感覚が強まるだろう。新型フィットでは座面のクッションを30mm厚くしてたわみ量を増やしているのだが、それでもちょっと物足りなく感じたのだ。フィットはご存じの通りフロントシートの下に燃料タンクを搭載する「センタータンクレイアウト」を採用しているため、シート下のフロアが盛り上がっている。この制限があるため、これ以上座面の沈み込みを大きくするのは難しかったのかもしれない。

新型フィットはクッションの中に樹脂製のマットを組み込むことで、身体を面で支える新しい構造を採用した。(写真:ホンダ)