筆者の知る限り誰も言わないのだけれど、スズキは毎年クリスマス前後に新型車を発表する。2016年12月27日は現行型「スイフト」、2017年12月25日が「クロスビー」、2018年12月20日は「スペーシア ギア」という具合だ。そして2019年のまさにクリスマス・イブに発表されたのが今回取り上げる新型「ハスラー」だ。

新型「ハスラー」の外観。フロント周りに先代のデザインを継承しつつ全体に角張ったデザインに生まれ変わった。
新型「ハスラー」の外観。フロント周りに先代のデザインを継承しつつ全体に角張ったデザインに生まれ変わった。

 そのちょうど6年前、2013年のクリスマス・イブに発表された先代ハスラーは、ホンダの「N-BOX」に代表されるようなスーパーハイトワゴン全盛の軽自動車市場に風穴を開け、軽クロスオーバーという新ジャンルをつくった。軽ワゴン車の室内の広さや使い勝手の良さはそのままに、SUV(多目的スポーツ車)風のデザインを取り入れたのが新しい。このコラムの「『大きいハスラー』の商品企画はここがうまい」でも取り上げているのだが、ハスラー以前にも、スズキ「Kei」やダイハツ工業の「テリオスキッド」、ホンダ「Z」といったSUV風のデザインを取り入れた軽自動車はあったのだが、いずれも大ヒットには至らなかった。

 そうした中で先代ハスラーが抜きんでることができたのは、そのユーモラスなデザインがユーザーに受け入れられたのもあるだろうが、乗り込んでみると室内の広さや荷室はスーパーハイトワゴン並みとはいかないまでも、「ワゴンR」などのハイトワゴンと同等には確保していて、実用上は何も犠牲にしていない。それでいて普通の軽ワゴンとはちょっと違うクルマに乗れるというのがハスラーの人気の秘密だろう。

新型ハスラーはジムニーに“寄せた”のか?

 新型ハスラーの実車は、2019年10月に開幕した第46回東京モーターショー2019でコンセプト車として出展されたものを初めて見たのだが(本コラム「ホンダ次期フィットがスマイル顔になったわけ」参照)、そのときの第一印象は「ジムニーに寄せたのかな?」ということだった。

 新型ハスラーの特徴の1つは、先代よりも直線的な、より“道具感のある”デザインになったことだ。具体的にいえば、同社の人気軽自動車「ジムニー」のデザインに近づけたように見える。現行型ジムニーは、2018年7月に20年ぶりの全面改良をして以来、納期が10カ月という高い人気が続いている。軽自動車でありながら本格的なオフロード走行が可能な4輪駆動車として、その実用性が高く評価されているのはもちろんだが、実際にそこまでの走行性能を求めている層は少数派だろう。

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