
もう1月も終わろうとしているのだが、前回の「トヨタがなぜ“街づくり”に取り組むのか」に引き続き、CES2020リポートの第2弾をお届けする。
今回のCESで実感したのは、自家用車向けの自動運転技術が当初思われていたよりも足踏みしていることだ。それが明確に表れたのが部品メーカー各社のプレスカンファレンスだった。ドイツZFや、フランス・フォルシアといった大手部品メーカーはそろって、「自家用車の自動運転レベルは当面2+にとどまる」と明言した。これを聞いて筆者は「部品メーカー各社にとって我慢の時期が来たな」と感じた。

多くの読者が「自動運転レベル2+って何?」とか「それと部品メーカーの我慢と何の関係があるの?」と感じたと思うので、順に説明していこう。まず「自動運転レベル2+」とは何か。1月1日付のこのコラム「2020年は『自動運転とEV』がジャンプする年」でも触れたように、今年はホンダが世界初の「レベル3」の自動運転車を発売する予定だ。
参照したコラムの繰り返しになるが、現在実用化されている「レベル2」と「レベル3」の最大の違いは、「ドライバーがシステムの動作状況の監視や、周辺監視を行う必要があるかないか」である。これまでに実用化されているレベル2の自動運転技術では、ステアリングやアクセル、ブレーキの操作が自動化されていても、ドライバーが常にシステムの動作状況や周辺の交通環境を監視する必要がある。また、ドライバーがシステムを監視する義務を忘れないように、ステアリングに手を添えていることを義務付けているシステムが多い。
これに対しレベル3の自動運転は、レベル2のようなシステムや環境の監視義務はないもののシステムが対応できないような状況に陥った場合には、運転を人間に戻すことになっている。つまり人間は、周辺監視やシステムの監視義務はないものの、システムからいつ運転が戻ってきてもいいように備えていなければならない。それまで運転をしていなかったのに、クルマから「運転を代わってくれ」と言われてすぐに適切な運転動作をするというのは難しいだろう。このため完成車メーカーによっては「レベル3は非現実的」というところもある。
これまでのレベル2の弱点を補う
では今回の話題である「レベル2+」とは何か?ということになるのだが、これは実はきちんとした定義がなく、部品メーカー各社とも「レベル2の進化系」くらいの意味で使っているところが多い。では、レベル2+では何か進化しているのか? 実はすでにレベル2+の商品は世の中に出ている。それがこのコラムの「ゴーン氏の“呪縛”から解放された日産『プロパイロット2.0』」で紹介した日産自動車のプロパイロット2.0である。
日産のプロパイロット2.0を初めて搭載した日産の新型「スカイライン」については近く改めて取り上げようと思っているので、詳しくはそのときに説明するが、カメラ1個で高速道路・単一車線を走行する場合の運転操作を自動化する従来の「プロパイロット1.0」に比べると、センサーの数が増え、またデジタル地図も装備するなど、大幅に重装備のシステムになっている。しかしこの改良による効果は明らかで、「高速道路・単一車線での手放し運転が可能」というプロパイロット2.0最大の特徴もさることながら、走行時のステアリング操作がはるかにスムーズになったのが印象的だ。
日産自身はプロパイロット2.0について「レベル2+」の自動運転機能とは名乗っていない。しかし、そもそも「レベル2+」という概念を2017年に提唱し始めたのは、日産に自動運転用半導体を供給しているイスラエルMobileye(米インテルが2017年に買収)であり、同社が言う「レベル2+」の条件はデジタル地図を備えていること(参照記事)だ。その意味でプロパイロット2.0は十分にレベル2+の条件を備えている。
同様にスバルも、1月20日に開催した報道関係者向けイベント「SUBARU技術ミーティング」で、運転支援システム「アイサイト」の次世代版について概要を紹介した。次世代アイサイトも高速道路での渋滞時に「手放し運転」が可能な機能を備えており、デジタル地図を装備してステアリング操作の精度を高めているので、スバル自身が名乗っているわけではないが、これもレベル2+に位置付けていいだろう。
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