使い勝手かボディー剛性か

 しかも、である。タントはさらに不利な条件を背負いこんでいる。というのもタントは車体の左側にセンターピラーを持たない構造を採用しているからだ。左側のセンターピラーを持たない構造は、軽自動車ではタント以外にホンダの軽商用車「N-VAN」で採用しているだけだ。センターピラーのない構造では、広い開口部の周囲をがっちりとしたフレームで固めたいところだが、先に触れたように、スライドドアを採用する車種は強度の高いサイドシルの断面構造を採ることは難しく、しかも穴も開けなければならない。タントはボディー剛性の確保という点では二重苦にさらされているのだ。

 タントの名誉のためにいえば、走っていて何か不安を感じるとかそういうことはもちろんなく、必要十分な剛性は備えている。センターピラーのない広い開口部を持つボディーは、子供の乗り降りを手伝ったり、ベビーカーをシートに取り付けたりといったシーンで使い勝手がいい。そういう点では、小さな子供のいるファミリーには大変使いやすい車種といえるだろう。

 今回のタントでは、運転席のスライド幅を延長することで、後端までスライドすると室内を通って後席と行き来できるようにしたのが特徴の一つだ。子供の世話がしやすいほか、助手席側から乗り降りできるので、交通量の多い道路での乗り降りもしやすい。このあたりは、車体のしっかりした感じを重視するのか、日常の使い勝手を重視するのか、実際に試乗して確かめたほうがいいだろう。

センターピラーのない大きな開口部とスライド幅を拡大した運転席を採用したことで、後席のものを取ったり、助手席側から出入りしたりすることが容易にできる(写真:ダイハツ工業)
センターピラーのない大きな開口部とスライド幅を拡大した運転席を採用したことで、後席のものを取ったり、助手席側から出入りしたりすることが容易にできる(写真:ダイハツ工業)

 筆者は現行型「ムーヴ」のボディー剛性や足回りのセッティングを高く評価していて、それがDNGAでどう改良されるか期待していたのだが、その実力の判断は、スライドドアではなく、センターピラーレスでもない車種に試乗するまで持ち越したいと思う。

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