しっかりした足回り

 では、DNGAがうたうこれらの効果は本当か。実車で確かめてみた。借り出したのは、「タントカスタム」のターボエンジンを搭載した前輪駆動仕様である。走り出してまず感じたのは、思ったより足回りがしっかりしていることだ。タントのようなクルマはファミリー向けというイメージがあるので、もっと柔らかい乗り心地を想像していたが、予想していたよりも路面の状態をはっきり伝えてくるセッティングだ。

 ただ、乗り心地は決して悪くない。確かに路面の凹凸ははっきり伝えてくるのだが、角が丸めてあるので不快ではない。路面の状態が伝わってくる足回りのほうが運転していて安心感があるのだが、それが過ぎると不快になる。そのあたりのさじ加減が非常にうまいと感じた。ただ、この足回りのセッティングにやや追いついていないと感じられたのがボディー剛性だ。足回りはかなり上手に路面からのショックを処理しているのだが、その衝撃がボディーに伝わると、局所的に収束せず、フロアの広い範囲に振動が伝わってしまうのだ。

 もっとも、これは筆者の期待値が大き過ぎたのかもしれない。タントはボディー剛性の確保に不利な条件が多いからだ。そもそもタントが採用している両側スライドドアという構造は、ボディー剛性確保に不利だ。これは、車体剛性を確保するのに重要な役割を果たすフロア両サイドを走る「サイドシル」というフレームを本来なら「ロ」の字や「日」の字のように閉じた断面構造にして強度を稼ぎたいのだが、スライドドアのクルマではこのサイドシルにドアをスライドさせるためのレールを内蔵しなければならず断面が外側に開いた「コ」の字断面にならざるを得ない。

 そのうえ、スライドドアは閉じるときに内側に引き込む必要があるので、そのレールはちょうどセンターピラーの下あたりで内側に湾曲している。この湾曲するレールを収容するため、サイドシルには穴を開けなければならない。このため本来なら強固に接合したいセンターピラーとサイドシルをうまくつなぐのが難しい。

新型タントのプラットフォームを横から見たところ、サイドシルにはレールを組み込むためのくぼみがあり、センターピラーのところには穴が開いている。
新型タントのプラットフォームを横から見たところ、サイドシルにはレールを組み込むためのくぼみがあり、センターピラーのところには穴が開いている。

 こうした条件は、別にタントに限らず、両側にスライドドアを備えた車種すべてにいえることだ。実際、タントよりも二回りや三回り車体が大きいミニバンでも、ボディー剛性という観点では決して褒められたものではない車種が多い。

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