ギアとベルトで駆動力を伝える
2つめの注目ポイントである新型CVTは、冒頭で参照したDNGAに関するコラムでも紹介しているが、金属ベルトとギアを併用することで変速比の幅を広げ、伝達効率も向上させたスグレモノだ。その原理はどうなっているのか? 以前のコラムよりも詳しく説明しよう。
新型CVTの基本構造を下に示す。下の原理図だとギア1とギア2はかみ合っているのだが、実際には低速域ではギア1が軸に対して空回りしていて駆動力は伝達していない。このためエンジンからの駆動力は通常のCVTと同様に、金属ベルトだけを介してタイヤに伝えられる。駆動力は、プーリーと呼ばれる2つの円盤状の部品にベルトを巻きかけることで伝えている。このプーリーは、巻きかけ半径を変えることで、変速比を変えることができる。

一方、中高速域では、ギア1が軸と結合される。するとエンジンからの駆動力は、金属ベルトとギアの両方で伝えられることになる。ここで注目すべきなのは、ギア2が遊星歯車機構を介して出力軸と結合されていることだ。遊星歯車のサンギアにはCVTからの入力が、リングギアにはタイヤへの出力軸が結合されており、ギア2は遊星歯車機構のキャリアーにつながっている。
つまり、エンジンからの出力は、CVTを通るものとギアを通るものに分かれ、遊星歯車機構を介して再び合成されることになる。このように駆動力を分けているため、新たに付け加えられたギア機構は「スプリットギア」と呼ばれている。
ダイハツは金属ベルトのみで動力を伝達するモードを「ベルトモード」、スプリットギアも動力伝達に使うモードを「スプリットモード」と呼んでいるのだが、ベルトモードからスプリットモードへは、変速比が最も高い(エンジンからの入力軸の回転数に対して、タイヤへの出力軸の回転数が最も高い)タイミングで切り替える。ここで面白いのは、1回スプリットモードに切り替えると、今度はCVTの変速比を低くするほど、ギアを通る駆動力の比率が高くなり、システム全体での変速比はむしろ高くなることだ。
CVTはこれまで、高速域で伝達効率が低下することが難点だとされてきた。高速域では金属ベルトに強い遠心力が加わるため、金属ベルトを構成する複数枚の金属帯同士の摩擦が増えることや、プーリーを金属ベルトに押し付ける油圧を高くしなければならないことにより、摩擦損失や油圧を生み出すための損失が増えるのが効率低下の原因だ。これに対してダイハツの新型CVTでは高速になるほど(変速比が上がるほど)、CVTを通る駆動力は減り、伝達効率の高いギアでの駆動力の伝達が増えるため、変速比の高い領域での伝達効率が従来のCVTに比べて8%向上したとしている。
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