各社が新型車を披露
文句がましい話はここまでにして、今回は東京モーターショーに各社が出展した、近く市販を予定する新型車について取り上げたい。最初に取り上げるのは、今回のモーターショーの目玉の1つだったホンダの新型「フィット」である。まず驚かされたのがデザインだ。現行型フィットが登場したとき、筆者はそのデザインのアグレッシブなことに驚いた。正式な発表前にスクープ写真が出回ったときにも、いくら何でもこのデザインでは発売されないだろう、と思ったくらいだ。
だから、今回のフィットのデザインの変貌ぶりには逆の意味で驚いた。現行型フィットの、グリルとヘッドランプが一体となったちょっとにらみを利かせているようないかついフロント回りは一変し、グリルレスのシンプルかつプレーンなデザインとなり、ヘッドランプにも、ちょっと笑っているみたいな優しい表情が与えられた。

横から見たデザインも、現行型の前下がりになった深いプレスラインがウエッジシェイプを強調するデザインから、より水平基調で、窓の大きさを強調したデザインになった。実際、サイドウインドー下端の位置を従来より下げているほか、フロントピラーを細くすることで前方視界の改善を図ったとしている。
「心地よさ」にこだわる
どうして新型フィットは現行型と大きく変わったのか。その理由は開発テーマにある。新型フィットの開発テーマは「心地よさ」だという。現行型フィットでは世界最高燃費を達成することが大きなテーマで、そのために、例えば空力特性を向上させるためのボディーパーツなど、燃費を向上させる部分にコストを重点的に割いていた。しかし、それが本当にユーザーのためになる使い方だったのか、反省があったという。
新型フィットでは、よりユーザーが実感できる価値を追求した。そのためにユーザーの潜在的なニーズを探ろうとインタビューや調査を実施したところ、安心、快適、リラックスといったキーワードが出てきた。これは日本に限らず世界的な傾向だったという。そこから「上質で心地よいクルマにしたい」という開発の方向が決まった。
内外装のデザインでは、「シンプル」「ニュートラル」「ナチュラル」などをテーマに「パートナーになれるデザイン」「親しみの持てる造形」を目指した。その結果が、ちょっと笑っているみたいなフロント回りや、「子供と洗車していても痛くなる部分のない」(会場の説明員)シンプルなボディー形状である。
内装に目を移すと、今どき珍しい、上面が真っ平らなインストルメントパネルのデザインや、2本スポークのステアリングが特徴的だ。全体を水平基調にして圧迫感をなくすのが狙いだが、デザイン以上に筆者が驚いたのが、インパネにソフトな素材を使っていることである。これまで国産車ではフィットが属するBセグメントでインパネにソフトな素材を使った例はほとんどない。これも「心地よさ」を重視した結果だ。

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