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 前回に続き、フランクフルトモーターショーのリポート第2弾をお届けする。今回のショーを訪れた目的の1つは、欧州メーカーの電動化への本気度を確かめることだった。すでに「大幅前倒しへ、トヨタがEV戦略で『心変わり』した理由」や、「ついにホンダも発売 各社のEVが似るワケ」でお伝えしてきたように、トヨタやホンダは2030年に向けて電動車両を大幅に強化する戦略を打ち出している。

ダイムラーも今回のフランクフルトモーターショーで大々的に電動化をアピールしたメーカーの1つ。高級車のEVコンセプト車である「VISION EQS」を公開した。

 しかしその内訳はハイブリッド車(HEV)が中心で、電気自動車(EV)の販売台数はホンダの場合で2030年に世界販売の15%〔燃料電池車(FCV)含む〕、トヨタの場合で2025年に100万台以上(FCV含む)にすぎない。トヨタグループの2018年度の世界販売台数はおよそ1060万台であり、2025年の世界自動車販売台数は現在の1割増程度と予想されていることから、トヨタの2025年度の販売台数を1200万台と仮定すると、トヨタの2025年におけるEV(+FCV)の比率は8%程度ということになる。

 これに対し、前回のこのコラム「VWとホンダのEVはどうしてこんなに違うのか」で取り上げたドイツ・フォルクスワーゲン(VW)グループは2016年6月に発表した2025年までの中期経営戦略「TOGETHER STRATEGY 2025」の中で、「2025年までに、EVの年間世界販売を最大300万台へ引き上げる」という目標を明らかにしている。150万台を中国で、残りの150万台をそれ以外の地域で販売する計画だ。

 2025年のVWグループの世界販売台数もトヨタと同じく1200万台程度と予想されているので、300万台という数字はグループ世界販売台数の25%に相当する。トヨタの目標の3倍だ。いかにVWがEVの導入に前のめりかがお分かりいただけると思う。この野心的な計画を達成する、まさに急先鋒(せんぽう)となるモデルが前回のこのコラムで紹介した「ID.3」であり、それに続く電動車両専用プラットフォーム「MEB」を使った派生車種群である。

VWだけではない

 電動化に前のめりなのはVWだけではない。今回のフランクフルトショーでその姿勢を鮮明にしたのがドイツ・ダイムラーだ。ドイツの自動車専門誌「アウト・モーター・ウント・シュポルト」のウェブサイトは9月19日の記事で、ダイムラーの研究開発トップであるMarkus Schaefer氏のコメントとして、現在様々な車種に搭載している最新エンジンが同社にとっての「最終世代のエンジン」になる可能性があることを伝えている。

 この報道に先立つ2019年5月に、ダイムラーは環境行動計画である「Ambition2039」を公表し、この中で20年後の2039年までに同社の乗用車をすべて「カーボンニュートラル」にするという目標を明らかにした。この目標を達成するため、2030年までに乗用車販売の50%をEVまたはプラグインハイブリッド車(PHEV)にする方針だ。この目標もまたトヨタやホンダよりも野心的なものである。これに先立つ2022年には製造段階から排出される二酸化炭素(CO2)を実質ゼロにする目標も打ち出した。

 前回のこのコラムで紹介したように「ガランとしたホール2」の中心に展示した今回のショーのダイムラーの目玉が高級EVのコンセプト車「VISION EQS」だ。同社が考える未来の高級車像を示すもので、前後に搭載した2基のモーターを合計した最高出力は350kW、0~100 km/hの加速時間が4.5秒というスポーツカー並みの加速性能を備える。

 また電池容量の80%を充電するのに最短で20分という高速充電が可能(通常は30分程度)なのも特徴だ。EQSという名称は、同社の電動車両のブランド名である「EQ」に、同社の製品のクラスを表すアルファベットを組み合わせたもので、「S」には同社の高級車種である「Sクラス」と同等の車格であるという意味が込められている。つまり同社は近い将来、Sクラスの領域もEV化していく姿勢をこのコンセプト車で示していることになる。