ドイツ・オペルはPSAとの提携生かす

 日本では輸入が打ち切られたためなじみが薄くなってしまったが、今回のフランクフルト・モーターショーで注目すべき新型車を出展したのがドイツ・オペルだ。もともとは米GM傘下にあったのだが経営危機に陥り、2017年にフランス・グループPSA(旧プジョーシトロエングループ)に買収された。その提携効果を生かした最初の新型車が今回のフランクフルトモーターショーに出展された「コルサ(Corsa-e)」である。

ドイツ・オペルが発表した新型EV「Corsa-e」(左)と搭載する電池(右)。電池は前後の座席の下に配置する。
ドイツ・オペルが発表した新型EV「Corsa-e」(左)と搭載する電池(右)。電池は前後の座席の下に配置する。
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 Corsa-eはBセグメントの小型車で、プジョーの「208」、シトロエンの「C3」と同じクラスに属する。すでにプジョーは208のEV版である「e-208」を、2019年3月に開催されたジュネーブモーターショーで発表している。Corsa-eは、208やC3と同じ「EMPプラットフォーム」を採用した、いわばe-208の兄弟車種的な位置づけだ。同じプラットフォームを使っているだけあって、横から見たプロポーションは208によく似ている。

 特徴は搭載するバッテリー容量が50kWhと、1クラス上のCセグメントのEVであるVWのID.3のベースモデルの45kWhよりも大きいことだ。にもかかわらず、価格はベースモデルで約3万ユーロからと、ID.3と同等に抑えている。モーター出力は100kWで、航続距離はWLTPモードで330kmとなっている。顧客への納車は2020年の春に始まる見込み。エンジン搭載モデルもEV仕様に続いて発表される予定だ。オペルは今回のショーで、同社にとって初めてのPHEVである新型SUV(多目的スポーツ車)「Grandland X Hybrid4」も併せて発表した。同社は2024年までに、すべてのモデルで電動仕様を用意する方針だ。

BMWは燃料電池車のコンセプト車を出展

 このほか電動化戦略で筆者が注目したのがドイツBMWの展示だ。今回のフランクフルトモーターショーでは「MINI」ブランドの新型EVである「MINI ELECTRIC」を公開したのだが、それ以上に筆者が注目したのが、燃料電池車(FCV)のコンセプト車「 i Hydrogen NEXT」である。技術的な詳細は公表しなかったものの、8月に同社CEOに就任したばかりのOliver Zipse氏はプレスカンファレンスで「2020年代の後半に需要が拡大することを期待している」と語った。

BMWが出展した燃料電池車のコンセプト車「 i Hydrogen NEXT」。SUVのX5をベースとした車両で、2022年に少量生産が始まる見込み。
BMWが出展した燃料電池車のコンセプト車「 i Hydrogen NEXT」。SUVのX5をベースとした車両で、2022年に少量生産が始まる見込み。

 出展したFCVのコンセプト車は同社の中型SUV「X5」をベースとしたもので、2022年から少量生産を開始する計画だ。車両レイアウトはフロントに燃料電池スタックを搭載し、後輪をモーターで駆動する。センタートンネルと後席下に高圧水素タンクを配置し、荷室スペースはX5のPHEVと同等という。BMWは2013年からトヨタ自動車とFCVの開発で協業しており、今回出展したFCVもその成果とみられる。

 このように、今回のフランクフルトショーはドイツメーカーのEVにかける「本気度」を如実に示すものとなった。これに対し日本の完成車メーカーは電動化に力を入れつつも、冒頭で参照したように、その柱は向こう10年を見ても依然としてHEVである。技術が進歩したとはいえ、航続距離や充電時間・充電インフラの面でいまだに課題を抱えるEVが、欧州メーカーのもくろみ通り普及するのか。壮大な実験に筆者も目をこらしているところだ。

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