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 このようにID.3とHonda eは、同等の価格帯でありながら大きく性格の異なるモデルとなっている。ただ、どちらが多く売れるかといえば、後席や荷室のスペースが限られ、出力や航続距離でも見劣りするHonda eが不利であることは否めない。逆にいえば、ID.3のコスト競争力は異常に高い。

 これは、日産自動車のEV「リーフ」と比べてみるとはっきりする。現行型リーフはコストを抑えるために、先代リーフからプラットフォームや多くの部品を流用している。その先代リーフのプラットフォームも、基本はエンジン車の「Bプラットフォーム」をベースとしたものだ。このように、既存のエンジン車と部品を共通化してコストを抑えたリーフ(ナビゲーションシステムが標準装備となるXグレード)でさえ価格は約366万円と、ID.3のベースモデルとほぼ同等である。

 リーフのXグレードの電池容量が40kWhと、ID.3のベースモデルよりやや少ないことを考慮すれば、コスト競争力はID.3の方が高いといえるだろう。巨額の開発費用をかけて開発されたはずのID.3の価格がリーフよりも低いというのは驚異的であり、VWのID.3にかける意気込みが伝わってくる。

 世界の市場を見れば、HEV(ハイブリッド車)ですらそれほど売れていないのに、EVがそんなに普及するのか――。国内の完成車メーカーにはまだそういう懐疑的な見方が多い。HEVで世界をリードする日本の完成車メーカーであればこそ、そういう見方には説得力があるのだが、今回のフランクフルトショーを見ると、欧州の完成車メーカーのEV(そしてPHEV=プラグインハイブリッド車)への傾斜と覚悟は間違いなく本物だ。次回はVW以外の欧州メーカーの電動化の「本気度」をお伝えしたい。