全4797文字

 展示会場を縮小したのはダイムラーだけではない。前回はホール3を占領していたVWグループや、ホール11をフルに使っていたBMWグループも、今回はフロアの一部を別の完成車メーカーに明け渡していた。つい4年ほど前までは展示面積が拡大を続けていたことを考えると、まさに隔世の感がある。

 フランクフルトモーターショーの現状は決して他人ごとではない。というのも、10月下旬に開催される東京モーターショーに、海外ブランドは「ルノー」「メルセデス・ベンツ」「スマート」「アルピナ」の4つしか出展しないからだ。来年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの影響で、東京ビッグサイトのメイン会場である東展示棟が使えなくなり、西・南展示棟と青海に設けられた特設会場との分散展示を余儀なくされたという事情を差し引いても、退潮の印象は否めない。

 ただし、こうした世界のモーターショーの「ローカルショー化」で各モーターショーの価値が下がるかといえば、筆者は必ずしもそう思っていない。というのも東京モーターショーに海外メーカーが出展しないということは、海外のショーに行かなければ最新型車や最新のコンセプトカーを見られなくなるということを意味するからだ。だから筆者自身は、海外ショーに足を運ぶ価値は、むしろ上がってきたと感じている。

「ID.3」が最大の目玉

 さて、いつにも増して前置きが長くなってしまったけれど、今回のコラムではEV(電気自動車)を取り上げたい。そもそも数年前から、欧州のモーターショーでは電動化が最大のテーマとなってきたのだが、今回のフランクフルトモーターショーの最大の目玉は、VWが初のEV専用車「ID.3」をいよいよ公開したことだ。

 ID.3の「3」という数字は、ID.3がCセグメント(ゴルフなどが属する)のクルマであることを意味するとともに、VWにとって「ビートル」「ゴルフ」に次ぐ3番目のチャプター(区切り、変わり目)を切り開くクルマであることを意味する。それを象徴するように、VWは今回のショーで、同社のロゴを刷新することも併せて発表した。

VWグループが発表した初のEV専用車「ID.3」

 ID.3についてはすでに過去のこのコラムで何度か取り上げているのでいくらか内容が重複することをお許しいただきたい。最大の特徴は、これまでの同社のEVが既存の車種をベースとしていたのに対して、ID.3は「MEB」と呼ぶEV専用プラットフォームを採用していることだ。MEBは現在のエンジン車で主流の前輪駆動ではなく、モーターを車体後部に搭載した後輪駆動を基本としている。