このガランとした展示会場は何なんだ?
 9月10日にプレスデーが開幕したフランクフルトモーターショーを今年も訪れた。まずプレスルームに立ち寄り、そこから最も近い展示会場であるホール2を訪れ、2年前の展示との違いに目を見張った。フランクフルトショーでは広大なホール2の全部を使い、ドイツ・ダイムラーがコンセプトカーや新型車をところ狭しと並べるのが恒例になっている。ところが今年はぽつりぽつりと展示車両があるだけで、あとは来場者用のベンチなどが並べられた、いささか寂しい空間が広がっていた――。

今年のフランクフルトモーターショーにおけるダイムラーの展示会場。いつもなら多くの展示車両が並ぶ会場が、今回は趣を一変させていた
今年のフランクフルトモーターショーにおけるダイムラーの展示会場。いつもなら多くの展示車両が並ぶ会場が、今回は趣を一変させていた

 2年前の当コラム「異例ずくめの『フランクフルトモーターショー』」、そして1年前の「いろいろ驚かされたパリモーターショー」でもお伝えしたように、モーターショーというイベントは今、大きな岐路に立っている。大げさにいえば、モーターショーというイベントが「オワコン(終わったコンテンツ)」になりつつあるのだ。

 上記の記事でお伝えしているように、これまで欧州の代表的な「国際モーターショー」として位置づけられてきたフランクフルトモーターショーやパリモーターショーが、急速にローカル化が進んできたのがここ数年の傾向だった。パリモーターショーにはドイツの代表的な完成車メーカーが出展せず、フランクフルトモーターショーにはフランスの代表的な完成車メーカーが出展しないという傾向が強まっていたのだ。

ドイツメーカーすら展示を縮小

 そして今回のフランクフルトモーターショーを見ると、どうやら“ローカル化”という段階すら超えつつあるようだ。出展した日本の完成車メーカーがとうとうホンダだけになり、トヨタ自動車や日産自動車、そしてマツダといった代表的な日本メーカーも出展を見送ったこともさることながら、それ以上に驚かされたのが、ダイムラーやフォルクスワーゲン(VW)、BMWといったドイツの代表的な完成車メーカーでさえ前回のショーよりも出展規模を縮小したことだ。

 その最たる例が冒頭で挙げたダイムラーの展示だ。メッセ・フランクフルト(フランクフルト見本市会場)のホール2はちょっと音楽ホールを思わせるようなドーム型の高い天井が特徴なのだが、いつもならこの会場を上から下までフルに使って多くの展示車両を並べるところを、今年はフロアの一部を閉鎖したうえで、どのフロアにもぽつりぽつりとコンセプトカーを並べるだけだった。そして市販車両の多くは、前回ショーではスマートブランドの車両を並べていたフォーラム会場に移した。

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